曇天模様の空の下、俺は未だに生きている。
16 残らない君
前に彩芽と会ってから約1週間が経過していた。
掌に柔らかな雨粒がぽつりと落ちる。
屋上で昼食をとっていた頃から降り始めた雨は今では静かな小雨となっていた。
空気の湿り気や冷たさ、葉に残る水滴から驟雨(しゅうう)の余韻を感じ取る。
雨音が遠ざかるにつれ、空は徐々に暗くなり、俺はいつもの公園へと足を運んだ。
彩芽はすでに到着していて、黒く曇った空を見上げていた。
「蓮、久しぶり」
公園の入り口に差し掛かったところで彩芽が俺に気づいた。
「うん、久しぶり」
少し湿ったベンチに腰を下ろし、彩芽の隣に座る。
「彩芽、今日映え写真撮ってみない?」
沈黙の後、俺は提案した。
「いいよ。でも、私って映るのかな?」
幽霊はカメラに映らないという話を思い出す。
「試してみよう!」
スマホのロックを解除し、カメラを起動。
彩芽にレンズを向けるが、画面には彼女の姿は映っていなかった。
第三者から見れば、俺が一人で話しているように見える状況にn少し恐怖を覚える。
彩芽との記憶だけが証拠として残るのかと思うと、虚しさが胸を締め付けた。
「映らないね」
「そっか」
聞こえないほどの小さなため息を吐く彩芽。
「確か、私の手でもシャッターボタンは押せるんだよね」
そういえば、幽霊だと知る前に一緒にスマホを操作したことを思い出す。
「そうだったね」
「貸して」
スマホを渡すと、彩芽は俺に向けてカメラを構えた。
「今、撮った?」
思わず声を上げる。
絶対、変な顔してた。
「さあ、どうかな?」
無邪気に笑いながら、彩芽は走り出す。
東屋の周りや遊具の間をぴょこぴょこと駆け回る。
「待ってよ」
遅れて追いかけ、彩芽の手からスマホを取り返す。
やっぱり変な顔。
焦点も合ってないし、口が真一文字。
削除しようとゴミ箱をタップするが、少し躊躇う。
彩芽がいなくなった後の唯一の証になるかもしれないという思いがよぎる。
迷っていると、彩芽がスマホに触れ、削除ボタンが消え、写真が明るくなった。
スマホケースの紐を引っ張って、再び撮ろうとする彩芽。
「分かった、消さないよ」
そう言うと、「本当だね」と笑った。
それから、互いの顔や曇った空、葉に残る水滴、カエルやカタツムリなどを撮り合った。
「これ、綺麗じゃない?」
自信満々に笑いながら、写真を俺に見せる彩芽。
その笑顔が好きだった。
いや、今でも好きだけれど、複雑な感情が絡み合ってしまう。
掌に柔らかな雨粒がぽつりと落ちる。
屋上で昼食をとっていた頃から降り始めた雨は今では静かな小雨となっていた。
空気の湿り気や冷たさ、葉に残る水滴から驟雨(しゅうう)の余韻を感じ取る。
雨音が遠ざかるにつれ、空は徐々に暗くなり、俺はいつもの公園へと足を運んだ。
彩芽はすでに到着していて、黒く曇った空を見上げていた。
「蓮、久しぶり」
公園の入り口に差し掛かったところで彩芽が俺に気づいた。
「うん、久しぶり」
少し湿ったベンチに腰を下ろし、彩芽の隣に座る。
「彩芽、今日映え写真撮ってみない?」
沈黙の後、俺は提案した。
「いいよ。でも、私って映るのかな?」
幽霊はカメラに映らないという話を思い出す。
「試してみよう!」
スマホのロックを解除し、カメラを起動。
彩芽にレンズを向けるが、画面には彼女の姿は映っていなかった。
第三者から見れば、俺が一人で話しているように見える状況にn少し恐怖を覚える。
彩芽との記憶だけが証拠として残るのかと思うと、虚しさが胸を締め付けた。
「映らないね」
「そっか」
聞こえないほどの小さなため息を吐く彩芽。
「確か、私の手でもシャッターボタンは押せるんだよね」
そういえば、幽霊だと知る前に一緒にスマホを操作したことを思い出す。
「そうだったね」
「貸して」
スマホを渡すと、彩芽は俺に向けてカメラを構えた。
「今、撮った?」
思わず声を上げる。
絶対、変な顔してた。
「さあ、どうかな?」
無邪気に笑いながら、彩芽は走り出す。
東屋の周りや遊具の間をぴょこぴょこと駆け回る。
「待ってよ」
遅れて追いかけ、彩芽の手からスマホを取り返す。
やっぱり変な顔。
焦点も合ってないし、口が真一文字。
削除しようとゴミ箱をタップするが、少し躊躇う。
彩芽がいなくなった後の唯一の証になるかもしれないという思いがよぎる。
迷っていると、彩芽がスマホに触れ、削除ボタンが消え、写真が明るくなった。
スマホケースの紐を引っ張って、再び撮ろうとする彩芽。
「分かった、消さないよ」
そう言うと、「本当だね」と笑った。
それから、互いの顔や曇った空、葉に残る水滴、カエルやカタツムリなどを撮り合った。
「これ、綺麗じゃない?」
自信満々に笑いながら、写真を俺に見せる彩芽。
その笑顔が好きだった。
いや、今でも好きだけれど、複雑な感情が絡み合ってしまう。