断罪令嬢、証拠品がアレでしたわ!
「アメリアったら……」
お姉さまは少し呆れたように微笑まれた。
「落ち着いて。なんだか淑女には相応しくない言葉が、ちらほら聞こえた気がするけれど……」
「でも、面白そうね。同じ学院のあなたなら、あの”すっとこどっこい”に目にもの言わせてやれるかもしれないわ」
お姉さまはそう言うと、いたずらっぽく目を細め、片方の口角を上げた。
そう。お姉さまはわたくしより二歳年上で、学院は既に卒業しているのだ。
「それなら、華々しい卒業パーティの場で——すっとこどっこいの鼻を思いっきりへし折ってやるのもいいかもしれないわね」
提案する声は軽やかで、けれどどこか静かな決意が混じっていた。
「お任せくださいませ! 四か月後の卒業舞踏会で、必ずアイツをギャフンと言わせてみせますわ!」
勢いあまって、椅子が後ろにガタンと鳴った。
拳を胸の前で握りしめるわたくしを見て、お姉さまはくすっと笑われる。
「ふふ……楽しみにしているわ」
お姉さまは口元に手を添え、品のある微笑みを浮かべられた。
——とはいえ、ただ突撃するわけにはいかない。
「まずは証拠を集めますわ。あとで“勘違いでしたー!”なんて言われてはたまりませんもの」
「ええ、証拠ならあるの」
お姉さまは静かに頷き、そばに控えていたメイドを呼んだ。
「——あの忘れ物を持ってきて」
ほどなくして、メイドがうやうやしく丁寧にラッピングされた包みを運んできた。
「確認してみて。彼が置いていったものよ」
わたくしは慎重に包みを開けた。
目に飛び込んできたのは、金糸で“Leon”と刺繍された布。
「……なるほど。これが証拠の品ですのね。すっとこどっこいの名前が入ったハンカチ……」
そう思ってその布を広げた瞬間、違和感を覚えた。
——おかしい。形が、平らではない。
角をつまむと、ふわりと布が垂れ下がる。
……左右に伸びる細い紐。中央には控えめなレース。
わたくしの思考が、一瞬で凍りついた。
「お、お、お、お姉さまっ!! これはっーーー!!」
これは、どう見ても——。
「パ、パ、パンティではありませんのーーー!!」
次の瞬間、わたくしは反射的にそれを床に叩きつけていた。
「お、お姉さま! 不潔ですわーーーーー!!!!」
わたくしの悲鳴は、屋敷の隅々まで響き渡った。
廊下のメイドたちが小首をかしげていたとかいなかったとか——。
「こ、これは一体っ……!!」
涙目で叫ぶわたくしの声が、部屋に響いた。
お姉さまは扇を手に取り、口元をそっと押さえられる。
「アメリア……ごめんなさいね。
わたくしもどうかしているとは思うのだけれども、証拠は……“これ”しかなくて」
その声は、いつもの優雅な調子のままなのに、どこか裏返っていた。
「そ、そんな……っ! こんなものを……証拠に……っ!?」
わたくしは顔から火が出そうだった。
お姉さまも同じように頬を染め、そっと視線を逸らされる。
「……本当に、恥ずかしいわね」
「ええ、もう、穴があったら入りたいですわ……」
ふたりして項垂れるわたくしたち。
床の上では、罪深き“証拠品”が、しゅんと静かに転がっていた。
——けれど、わたくしは涙目のまま、ぎゅっと拳を握りしめた。
「……でも、お姉さま。わたくし、諦めません。必ず真実を突き止めてみせますわ!」
お姉さまは困ったように笑い、それでも少し誇らしげに頷かれた。