断罪令嬢、証拠品がアレでしたわ!
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 ——そして、舞台は再び、あの舞踏会の夜へと戻る。

「証拠はここにありますわーーー!!」

 会場がどよめいた。
 掲げられたのは、一枚の絹の……パンティー。

 しかも、端には堂々と金糸で“leon”の刺繍が。
(フン。素手で掴むなどおぞましいですわ! 火箸で十分ですのよ!!)

 呆然とする殿方たち、悲鳴をあげる令嬢たち。
 その中で、わたくしは勝利の笑みを浮かべ、手にしていた火箸を振りかぶった。

 「この下着の持ち主はっ……!」

 ポイッ。

 パンティーが宙を舞い、見事にレオン様の足元に着地。
 「きゃああああああっ!!!」
 会場中に悲鳴が響き渡る。

 「わたくしの敬愛するお姉さまを——辱めたのです!!」
 「言葉巧みにお姉さまに近づき、愛し合ったというのに……っ!」
 「“君は本命ではない、遊びだった”などとのたまいお姉さまを捨てた、とんでもない悪党ですわ!!」

 ざわつく会場。
 「そんな……あのレオン様が……?」
 「信じられない……!」
 貴族令嬢たちの囁きが広がる。

 レオン様のもとに、いくつもの視線が突き刺さった。

 「ま、待ってくれ……!! 私には心当たりが——」

 「やっぱり、しらばっくれるんですのね!!」
 わたくしは一歩前へ進み、最後の一手を放つ。

 「これでもまだ否定なさるの!? では……こちらをご覧なさいませ!!」

 紙袋の中から、火箸でつまみ上げたもうひとつの証拠。
 それはレオン様から拝借した——いえ、“お借りした”ハンカチ。

 パンティーの横へ、ひらりと投げ落とす。

 「ごらんなさいませ!! こちらのハンカチはレオン様からお借りしたもの!」
 「そしてこちらの下着にも、両方に同じ“Leon”の名入り刺繍が施されていますわ!」

 「もう——言い逃れはできませんわ!!」

 わたくしはビシィッと指を突きつけた。
 顔面蒼白になっているレオン様。
 その美しい唇が、かすかに開いた。

「ちょっと待ってくれ。このハンカチは確かに私のものだ。
 しかし、こっちの下着は——私のものではない」

 会場にざわめきが広がる。

「この刺繍……我が侯爵家のものとは違う。
 私の物には、家紋が入っている」

 「そ、そんな……!?」

 確かに……パンティとハンカチでは、刺繍の色も文字の形も微妙に違っているとは思っていた。
 さらに、ハンカチには侯爵家の紋章が織り込まれていたけれど——パンティには、それがなかった。

 (ま、まさか……べ、別人のもの!?)

 必死に集めた証拠品で、逆にレオン様の無実が証明されてしまった。

 「そ、そんな……そ、そんなはずでは……っ!」
 わたくしは膝から崩れ落ちた。

 「じゃあ、このパンティの持ち主——セレスティア王立学院の“侯爵家のレオン様”は一体誰ですのーー!?」
 震える声で叫ぶ。

 すると、会場の片隅からおずおずと声が上がった。

 「あのう……わたくし、その下着の持ち主に心当たりがあるかもしれませんわ」
 ひとりの令嬢が、おそるおそる手を挙げた。

 「ですわよねぇ!!」
 彼女は勢いよく振り返り、ある男を指さした。
 「セレスティア王立学院の——()()()のレオナルド様!!」

 会場の視線が、一斉にその男へと向かう。
 こっそりと退出しようとしていた、金髪をかき上げる青年。

 公爵家のレオナルド・ヴァレンシア。
 女子とのトラブルが絶えず、社交界でも有名な“問題貴公子”。

 (そ、そうでしたわ……! どうして気づかなかったのかしら……!
  レオナルド様は……親しいご令嬢からは愛称の“レオン様”で呼ばれておりましたわーー!!)

 「わたくしもあの下着、見覚えがありますわ!」
 「わたくしのことも遊びだったのですか!? レオン様っ!!」

 次々と令嬢たちが声を上げ、彼の周囲を取り囲む。
 場は、もはや断罪どころではない大混乱に陥っていた。

 (あああ、なんてこと……! お姉さまを弄んだすっとこどっこいは——レオナルド様でしたのね!!)

 「も、申し訳ございませんっ!! レオンハルト様、わたくしの勘違いでーーー!」

 わたくしは勢いよく頭を下げた。

 が、その瞬間、レオンハルト様に腕を掴まれた。

 「ひっ……!?」

 ぐい、と引き寄せられる。
 (そりゃあご立腹になりますわよねぇえええっ!!)

 必死に謝りながら引きずられていくわたくし。
 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃ!!!」

 「許さない」

 その低い声が耳元で響き、背筋が凍る。
 「ひいいいいい!!」

 リリィが駆け寄ろうとしたが、騒然とした場内の中で二人を見失ってしまった。
 

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