「庭の千草」狂詩曲(ラプソディー)
末期癌で抗がん剤を使用していたダフィットと、腱鞘炎の痛み止めを服用していたクレア。

クレアは妊娠を知った時も出産した時も悩んだに違いないと思った。

詩月は物心つくかつかないかの頃、見様見真似(みようみまね)で、ヴァイオリンを弾き始めた。

クレアの演奏する「夏の名残りの薔薇」を聴いていた。

傷めた指で演奏する「夏の名残りの薔薇」は、ゆっくりで途切れ途切れだった。

詩月はクレアがヴァイオリン教室の片隅で写真を抱きしめ泣いている姿を観て、ただ泣き止んでほしくて演奏した。

クレアが繰り返し演奏する「夏の名残りの薔薇」を覚えて、詩月がヴァイオリン演奏をすると、クレアは泣き止んだ。

詩月のヴァイオリン演奏は自己流で運指はデタラメだったが、クレアの心を癒した。

幼い詩月は何故、クレアが難曲の「夏の名残りの薔薇」を無理して演奏しているのかは知らなかった。
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