「庭の千草」狂詩曲(ラプソディー)
ただクレアにとって「夏の名残りの薔薇」が大切な曲だということだけは、理解した。

クレアの弾いているヴァイオリン「ガダニーニ」と、ヴァイオリン教室で生徒が使用しているヴァイオリンの音が、全然違うことにも気づいた。

リリィにヴァイオリンを教わり始めて、「ガダニーニ」が曰く付きのヴァイオリンで「シレーナ」と呼ばれていることを知った。

クレアは「シレーナ」に呪われたーー幼な心にそう思い、恐かった時期もある。

だが、詩月が中学2年生になった時、クレアからダニーニの「シレーナ」を託された。

詩月はそれまで弾いていた分数ヴァイオリンよりも格段に弾き易いと思った。

リリィからヴァイオリンの街頭演奏を勧められたのと、「シレーナ」を託されたのは、ほぼ同時期だった。

詩月はクレアとリリィの心配をよそに、弾き始めた頃は緊張で震え泣きながら演奏したが、「シレーナ」を1年余りで見事に弾きこなした。

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