「庭の千草」狂詩曲(ラプソディー)
ユリウスもクレアも「夏の名残り薔薇」と呼ぶが、詩月にとっては「庭の千草」と呼ぶ方が馴染み深い。

ヘビーメタル級の超絶技巧曲だ。

そんな難曲が十八番、しかも癖の強いガダニーニの「シレーナ」で弾きこなしたと云う演奏を直に聴いてみたかった。

叶わない願いだ。

詩月には、写真でしか知らないダフィットが実の父親だと聞かされても、実感が沸かなかった。

「ヴァイオリン、『夏の名残りの薔薇』弾いてもいいかな」

「詩月、聞いていたか? ダフィットの十八番だぞ」

「ユリウス。だからだよ。彼の十八番だからだ。今、僕が手にしているのはガダニーニの『シレーナ』だ。元は彼のヴァイオリンで、母さんが彼から託されたヴァイオリンで、母さんから僕に託された。腕試しに、彼に聴いてほしいと思うのは、必然だろ」

クレアも宗月もユリウスも、詩月の言い分を聞いて、大した度胸だと驚いた。
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