「庭の千草」狂詩曲(ラプソディー)
詩月の見た目は華奢で繊細だ。

大人しそうで、何処にそんな度胸や大胆さがあるのかと思うほどだ。

詩月が曲を演奏し始めると、クレアたちは弾き始めから、更にハッとした。

ノスタルジックで優しく暖かな調べは、今しがたの度胸とは違い、穏やかで透き通るように清々しい音色だ。

何処か懐かしい独特の弾き方には、聴き覚えがあった。

「宗月、信じられないわ」

「静かに……」

クレアは感情を抑えきれずに、口にしたが、宗月は演奏に集中したくて、クレアをひと言で黙らせた。

ユリウスは目を閉じ、演奏に聞き入り、時々ため息を漏らした。

彼らは各々、自分の耳を疑った。

演奏しているのは確かに詩月だと、何度も目を凝らす。

ーーこの演奏、この音色は何だ。細部に至るまで、聞き覚えがある

彼らの目にも、耳にもダフィットの演奏姿と音色が重なった。

ーー本当に詩月がヴァイオリンを奏でているのか
< 373 / 380 >

この作品をシェア

pagetop