「庭の千草」狂詩曲(ラプソディー)
クレアは胸の奥底から込み上げてくる感情に、涙で頬を濡らしていた。

ーー先生……

口に出したつもりが、声にはならなかった。

最後にダフィットの演奏を聴いて以来、20年も経っている。

それにも関わらず、鮮明にダフィットの音色が詩月の演奏と寸分違わず重なる。

次はきっと、こう弾くと解っている通りの演奏が再現されていく。

詩月がピアノ演奏で宗月のショバンを完全コピーする、詩月の「夏の名残りの薔薇」はそれ以上にダフィットの演奏そのものだ。

ーー詩月がダフィットの演奏を知るはずはない。偶然にしても、こんなことがあるだろうか

宗月もユリウスも思いながら、言葉が出なかった。

ダフィットの墓の前だ。

ダフィットの魂が詩月に、この演奏をさせているのか。

演奏しているヴァイオリンは、「ローレライ」の異名を持つガダニーニの「シレーナ」だ。

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