「庭の千草」狂詩曲(ラプソディー)
それは今まで詩月のピアノ、ショバンの演奏を聴くたび思ってきた。

宗月は完全コピーするほど似ている、何度も感じてきた。

だが今、詩月が演奏している「夏の名残りの薔薇」は、完全コピーどころではない。

ダフィットの演奏する「夏の名残りの薔薇」そのもの、生き写しだった。

演奏姿も、表情までもダフィットだ。

「こんなことがあるの……こんな奇跡が」

クレアの涙は止まらなかった。

詩月が「夏の名残りの薔薇」を演奏し終えると、皆しばし言葉がなかった。

詩月の体がぐらりと揺れ、ユリウスが「あっ」と声を漏らし、咄嗟に支えた。

「声が、ダフィットの声が演奏中ずっと聞こえていた」

詩月の頬は濡れていた。

「納得のいく演奏はできたか」

宗月が詩月を見つめながら訊ねた。

「ーー解らない。指が何も考えなくても動いていた。思いが、感情が溢れて、声に導かれるまま演奏していた……胸が熱い」

詩月はユリウスが支えていなければ、立っているのもやっとだった。
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