「庭の千草」狂詩曲(ラプソディー)
学生が2人、渡り廊下で話していると反対側から歩いてきた詩月とすれ違った。

「詩月!?」

声に出して振り向くと、詩月が立ち止まり振り返っていた。

「何か?」

「あ、あのピアノの調子が少し悪いんだが調律してもらえないかと」

「まだ調律師だから…… 一応、工房を通してもらえないか」

詩月は言いながら、名刺を手渡した。

「何かあった時、見習いでは責任を負えない。その辺りはボスが厳しいんだ」

学生たちは手渡された名刺を繁々とみつめた。

名刺には「調律師見習い 周桜詩月」と記されている。

「お前。調律師の資格、本気で取得するつもりか」

「もちろん、やるからには。ベーゼンドルファーやベヒシュタインをきっちり調律できるくらいには」

「変わったヤツ」

「自分の可能性は自分で拡げていきたい。そうでなきゃ勿体ないだろ」

詩月は呆れるほど、清々しい顔で言った。

Fin.




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