「庭の千草」狂詩曲
物心ついた頃に両親は離婚した。

母はあまり丈夫な人ではなかったようだ。

心労が重なり、私が16歳の時に亡くなった。

ヴァイオリンは父が、私が3歳の時に習わせてくれた。

両親が離婚した時、ヴァイオリンをやめさせられなかったのは、ヴァイオリン教室の先生のお蔭だ。

「君の事情が大変だったのは少し理解した。だけど、それが無茶な練習をする理由だとは思えない」

「先生に……」

「君はダフィット教授のロボットではない」

宗月は意外に頑固だった。

「選曲リストを返して。別の伴奏者を探すわ」

宗月は私が観念して言うと、キッパリ言った。

「イヤだ」

差し出した私の手を取った。

「やっぱりだ。爪も割れて絆創膏だらけ。関節も熱を持って腫れているじゃないか」

「貴方には関係ない」

「君のこの指は教授のためだけに演奏する指ではない。君の夢を叶える指だろう。無理して腱鞘炎になったら、演奏できなくなるだろ」
< 51 / 359 >

この作品をシェア

pagetop