「庭の千草」狂詩曲
ユリウスとエィリッヒは短い言葉に頷いて、先生を真ん中に挟んで着席した。

「舞台に上がって緊張したら、先ず深呼吸すること。それから知っている顔を探して。落ち着くはずだ。俺はいつもそうしている」

宗月が待合室に向かう途中で言った。

意外だった。

いつも絶対にミスはしないぞと自信に満ちていて、堂々としている。

緊張とは無縁の人だと思っていた。

「うん」

「調弦は大丈夫か、弓は?」

「出かける前に先生と確認した」

宗月は、わたしよりソワソワしている。

つい可笑しくなって、フッと笑みがこぼれた。

「笑うな」

ボソッと言って、ツンとそっぽを向く。

初めて見る仕草だった。

舞台に立つと、カーッと全身が熱くなった。

宗月に言われた通り、深呼吸した。

知っている顔を探して、先生とユリウスたちが居る席を見つめた。

ーー先生

< 84 / 359 >

この作品をシェア

pagetop