「庭の千草」狂詩曲
ダフィット教授は観客席で、ユリウスとエィリッヒに見守られ座っていた。

クレアの演奏を1音たりとも聞き逃すまいと耳を澄ましていたはずだ。

クレアの渾身の演奏に、胸を踊らせたはずだ。

「聞き逃すはずがないさ。誰より耳を凝らしていたさ」

俺は弟子が、師匠が弱った体に鞭打ちコンクールの観客席に座っているのを気遣うのは、当然だと自分自身に言い聞かせた。

どんなに体調が悪くても、クレアの演奏だけは最初から最後まで1音も漏れなく聴いてほしい。

いや、届けてみせるーーそんな気持ちで演奏したのだから。

セミファイナルの審査後。

審査員会議は1時間半ほどかかったようだ。

通過者の名前はアルファベット順に呼ばれる。

Cから始まるクレア(Claire)の名前は最初に呼ばれた。

俺は「よし!」声に出しガッツポーズした。

クレアは俺の腕をギュッと握りしめた。

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