嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
(――オーンの名を受けし、星に堕とす者)
この二年、カイは国中を探し回っていた。ラスの対となるべく生まれた、その人物を。
自分と対になる託宣を受けた者がいる。カイを星に堕とすためだけに、龍が用意した存在が――
本神殿にある託宣の書庫で見つけた情報だった。ハインリヒの託宣の相手を探していた時に、カイはこの事実を偶然知った。いや、むしろ知らされたと言うべきだろうか。偶然と片づけるには、今思うとあまりにも都合がよすぎる状況だった。
龍の手のひらの上で、すべては順調に進んでいるのだろう。目隠しで歩まされる人間たちは、ただそれに翻弄されるしかない。
そんな中でも降りる託宣のほとんどは、婚姻の番を定めたものだ。それなのに自分に与えられた託宣は、なぜこうも理不尽なのか。
新たな手掛かりを探して、壁に刻まれた文字に指を滑らせる。そこにひとつの模様を見つけ、カイは無意識につぶやいた。
「これはラウエンシュタイン公爵家の……」
星と塔を模ったリーゼロッテの生家の紋章だ。見渡すと、それは一定間隔で壁に施されているようだった。
「あの光の筋は……聖女というより、ラウエンシュタインの力に反応していたのか……?」
「元々ここはラウエンシュタイン所縁の土地。星読みの帰参に歓喜しておるのじゃろう」
気配なく放たれた声に、条件反射で距離を取った。帯剣を許されない神殿で、隠し持った短剣に手をかける。
「ふぉっふぉっふぉ、ここは神域。物騒な真似をするでない」
そこにいたのは老齢の、腰の曲がった背の低い女神官だった。奇妙な薄っぺらい二輪の車にまたがり、しわくちゃの顔をカイに向けている。
「貴女は……」
「わしはこの神殿の古株のおばばじゃ。こんな奥まったところにまで来て、お主こそ何奴じゃ」
「これは失礼を。わたしの名はカイ・デルプフェルト。アンネマリー王妃殿下の命により、本日ここで行われるフーゲンベルク公爵の婚儀の警護に遣わされた王城騎士です」
この二年、カイは国中を探し回っていた。ラスの対となるべく生まれた、その人物を。
自分と対になる託宣を受けた者がいる。カイを星に堕とすためだけに、龍が用意した存在が――
本神殿にある託宣の書庫で見つけた情報だった。ハインリヒの託宣の相手を探していた時に、カイはこの事実を偶然知った。いや、むしろ知らされたと言うべきだろうか。偶然と片づけるには、今思うとあまりにも都合がよすぎる状況だった。
龍の手のひらの上で、すべては順調に進んでいるのだろう。目隠しで歩まされる人間たちは、ただそれに翻弄されるしかない。
そんな中でも降りる託宣のほとんどは、婚姻の番を定めたものだ。それなのに自分に与えられた託宣は、なぜこうも理不尽なのか。
新たな手掛かりを探して、壁に刻まれた文字に指を滑らせる。そこにひとつの模様を見つけ、カイは無意識につぶやいた。
「これはラウエンシュタイン公爵家の……」
星と塔を模ったリーゼロッテの生家の紋章だ。見渡すと、それは一定間隔で壁に施されているようだった。
「あの光の筋は……聖女というより、ラウエンシュタインの力に反応していたのか……?」
「元々ここはラウエンシュタイン所縁の土地。星読みの帰参に歓喜しておるのじゃろう」
気配なく放たれた声に、条件反射で距離を取った。帯剣を許されない神殿で、隠し持った短剣に手をかける。
「ふぉっふぉっふぉ、ここは神域。物騒な真似をするでない」
そこにいたのは老齢の、腰の曲がった背の低い女神官だった。奇妙な薄っぺらい二輪の車にまたがり、しわくちゃの顔をカイに向けている。
「貴女は……」
「わしはこの神殿の古株のおばばじゃ。こんな奥まったところにまで来て、お主こそ何奴じゃ」
「これは失礼を。わたしの名はカイ・デルプフェルト。アンネマリー王妃殿下の命により、本日ここで行われるフーゲンベルク公爵の婚儀の警護に遣わされた王城騎士です」