嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 礼を取りつつも、カイは内心舌打ちをしていた。禁忌(きんき)の異形に堕ちるという託宣により、神殿からは()み嫌われている立場だ。早急にここから追い出されることを覚悟する。

「ほほう、お主がラスの託宣を受けたという……なるほど、なかなかいい(つら)構えじゃな」

 刻み込まれたしわを深め、おばばと名乗った神官はカイに好奇の目を向けた。

「あの……いいのですか?」
「何がじゃ?」
「わたしが()()と呼ばれているのはご存じなのでしょう? そんなわたしがこの場にいて、貴女は不快に思われないのですか?」
「なんじゃ、そんなこと」

 欠けた前歯を隠そうともせず、おばばは快活な笑い声を立てた。

「確かにお主は神殿界隈(かいわい)でいろいろと言われておるようじゃな。だがお主も好きで龍から託宣を賜ったわけではなかろう? それにお主の渾名(あだな)とわしの認識に、一体なんの関係があるというのじゃ」

 不服とばかりに片眉を吊り上げる。予想と違うおばばの態度に、カイは少々面食らった。これまで神殿で受けたと言えば、忌避(きひ)すべき(けが)れ扱いばかりだ。

「で、お主はこんな場所で何をしておったのじゃ?」
「それは……」

 言葉を探して、リーゼロッテの力が走っていった先を見やる。そんなカイを前に、おばばは納得したように頷いた。

「そうか、そうか。星読みの力を追ってきたという訳じゃな。ならばもっと良いものが見れるじゃろう」

 そう言って、おばばはまたがっていた二輪車のペダルに足をかけた。ぶるぶる震える手でハンドルを握り、その足をえいやと踏み出した。

「何をしておる。置いてゆくぞ」

 小刻みにぶれるハンドルさばきで進む二輪車は、カイの歩みよりも果てしなく遅かった。倒れそうで倒れない。見ている方がハラハラする運転ぶりだ。

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