嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「どうじゃ、この鉄の乗り物は。カッコええじゃろう?」
「これはフーゲンベルク家の……?」

 最近貴族の間で、フーゲンベルク製の二輪車が流行っていると聞いていた。もっぱら敷地内の移動用として、馬の代わりに使用人が使っているらしい。

「おお、よく知っておるな。公爵家が寄付してきよった最新のからくりじゃ。神殿内を素早く移動できて重宝しておる」

 自慢げに言う割には、先ほどからほとんど前進していない。この速度でなぜ倒れないのか、不思議でならないくらいだ。

「もしよろしければ、わたしが代わりに運転をしましょうか……?」

 しばらくの間、黙ってのろのろと横を歩いていたものの、恐る恐る問いかける。なんとも調子の狂う相手を前に、これまでにない戸惑いを感じるカイだった。

「そうか、なかなか気が利く男じゃな。お主、おなごにモテるじゃろう?」
「いえ、騎士として当然のことかと」
「ふぉっふぉ、謙虚な態度も気に入った! さぁ、このまま真っすぐ進むが良いぞ」

 おばばを後ろに乗せ、見よう見まねで()ぎ出した。しばらく左右に大きくぶれながら進むも、バランスを取るにはある程度のスピードが必要であることを理解する。

「おばば様、しっかりつかまっててくださいね!」
「心得た!」

 長い廊下を風を切って進む。馬とはまた違った爽快な走り心地だ。

「そこについている取っ手が車輪止めじゃ。急に使うと前につんのめるゆえ、加減に気をつけるんじゃぞ?」

 おばばにレクチャーを受けつつも、感覚で使いこなしていく。感心すべきはこの二輪車の無駄のない構造で、さすがフーゲンベルク製といったところだ。

 駆け抜けた先、途切れた廊下でいきなり空間が(ひら)けた。勢いで進んだ広間の真ん中で、ようやくふたりを乗せた二輪車は停止した。広すぎるドーム状の部屋に出て、見上げた一面の壮大な壁画(へきが)に、カイは言葉もなく魅入られる。

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