嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
 あれから七日ほどが経ち、夜ぐっすり眠れる毎日に、リーゼロッテはすっかり体力を取り戻していた。
 朝起きた時、ジークヴァルトがすでにいないのは相変わらずだ。だがふと夜中に目覚めると、いつでもジークヴァルトと目があった。そのたびにやさしくキスをされ、満たされた気持ちで再び眠りに落ちた。

(あれ以来、腰を一晩中ずっとさすってくれるのよね……)

 まどろみの中、絶えずジークヴァルトの手を感じる。だいぶ楽だからもうしなくていい。そう言っても、問題ないと返されるだけだった。

 ご機嫌にはしゃぎまわる小鬼たちが、目の前を横切っていく。壁際には、ぴしりと背を伸ばして立つカーク。明るい日が差し込むサロンには、以前と同じ平和な風景が広がっていた。その様子にほっと胸をなでおろす。

「サロンでお茶をするのも久しぶりね」
「はい、奥様」

 差し出された紅茶に微笑むと、エラも笑顔で頷いた。

「いつの間にかもう夏になってしまったわ」
「春はあっという間に過ぎてしまいますからね。……それに今年は雪解けが遅かったせいか、余計に冬が長く感じられました」

 東宮で迎えた年明け。新しい御代の始まり。第一王女の逝去。その直後、リーゼロッテは神殿に攫われた。ジークヴァルトの誕生日もそのまま過ぎて、ようやく公爵家に戻れたのが冬の終わりのことだった。
 春の間、全く歩かせてもらえなくて、いろいろと苦労したことを思い出す。新緑の時期に神事の旅に出て、帰ってきたのはつい半月前だ。

 旅の間もいろいろあった。思いがけず実父イグナーツと再会を果たし、クリスティーナ王女が生きていることも知った。森の魔女は少女の姿をしていたし、そこでジークヴァルトと夫婦の契りを交わした。
 帰りの道中で辺境の砦に立ち寄って、初恋の人ジークフリートにも会うことができた。マナー教師のロッテンマイヤーさんに至っては、ジークヴァルトの母親だったのだから驚いた。

「本当に一年でいろいろあったわね……」

 感慨深くため息をつく。去年の今頃はジークヴァルトとようやく思いを通わせ、うきうきで誕生日を迎えたことを覚えている。それがもう公爵夫人の立場となった。

 おととしの春にジークヴァルトと再会してからというもの、人生がジェットコースターのように目まぐるしく変化した。それまで代わり映えもしなかった深窓の令嬢生活が、まるで嘘のように思えてくる。

(なんだかもう、人生何が起きても驚かないって感じだわ)

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