嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「フーゲンベルクのお屋敷と違って、ここは随分と静かですのね……」
「ラウエンシュタイン城は許された人間しか入れないと聞いている。使用人も厳選されているんだろう」

 少数精鋭と言ったところだろうか。これだけ広い敷地を少人数で管理するのは、なかなかに大変そうに思えた。

「こっちだ」

 分かれ道があるにも関わらず、案内もなしにジークヴァルトは迷いなく進んでいく。

「ヴァルト様はここをよく知っていらっしゃるのですね」
「子どものころ、一度お前に会いに来ただろう?」
「あ……あれはここでの出来事だったのですね……」

 初めて会った日に、黒いモヤを(まと)うジークヴァルトが恐ろしすぎて、とにかく泣きまくったことを覚えている。そんなリーゼロッテを抱き上げて、慰めるように守り石をくれたのは、ジークヴァルトの父親ジークフリートだ。

(なんとなくダーミッシュ家にいたときだと思ってたわ)

 初恋の人にもらった守り石を、伯爵家の部屋で毎日のように陽にかざして眺めていた。月日とともに綺麗な青はくすんでしまったが、あの守り石は異形たちから幼いリーゼロッテを守ってくれていたのだろう。

(わたしがダーミッシュの屋敷で転びまくっていたのは、きっと守り石の力が無くなってしまったからね)

 ずっとジークフリートに貰ったと思っていたが、あのペンダントはジークヴァルトからの贈り物だった。自分のしていた勘違いに、なんだか笑いがこみ上げてくる。

「どうした?」
「いえ、わたくし初めてお会いしたとき、ヴァルト様が黒いモヤを纏っているように見えてしまって……それ以来ヴァルト様のこと、ずっと恐ろしい魔王のように思っておりました」

 でもあれは取り()いた異形たちの恐怖に、リーゼロッテがシンクロしてしまっていたからだ。理不尽(りふじん)にジークヴァルトを毛嫌いしたりして、今さらながら申し訳ない気分になった。

「ヴァルト様は何も悪くないのに、わたくしったらなんてひどいことを……」
「いい。あの頃お前は異形が視えなかったんだ。それにオレの不手際もあった」
「不手際だなんて……。そう言えばヴァルト様はどうして、子どものころはわたくしに会おうとなさらなかったのですか?」

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