嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
 最後に通された子ども部屋も、なんとなく見覚えがあった。暖炉のある居間に寝室が別になっていて、乳母用と思われる小部屋も備えられている。

「お時間までここでおくつろぎください」

 (かぐわ)しい紅茶と焼き菓子を置いて、ルルはひとり下がっていった。

「疲れたか?」
「いえ、なんだか気持ちが高揚してしまって……」

 早朝に公爵家を出発し、午前中にはティビシス神殿で結婚式を終えた。大急ぎで着替えたあと、ジークヴァルトとふたりでこのラウエンシュタイン城に(おもむ)いたという強行軍ぶりだ。しかもこれから日が沈みかける中、フーゲンベルク領へと戻ることになっていた。

「わたくしは帰ってからゆっくりできますし、むしろヴァルト様の方が心配ですわ」
「いや、オレは何も問題ない」

 忙しい執務の合間を縫って、リーゼロッテのためにスケジュールを空けてくれた。そんなジークヴァルトは休む間もなく、明日から激務の日々が待っている。

(やっぱりわたしがもっと自立しないと……)

 力の制御は上手にはなったが、異形に対して無防備なのは変わらない。

「何を考えている?」
「いえ、わたくしも明日からなまけず頑張りますわ」

 神殿に(さら)われて以来、ジークヴァルトは片時もリーゼロッテを離そうとしなくなった。王城出仕で屋敷を空けるときなどは、必要以上に何度も様子をうかがってくる。リーゼロッテもその不安を()んで、留守番の日は極力部屋から出ないようにしていた。

「お前が頑張る必要など何もない」
「ですからそうやって甘やかさないでくださいませ」

 膝に乗せられあーんをされる。幼い自分が過ごしていた部屋で、ジークヴァルトとこうしていることが、何だか不思議な気分になった。

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