嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 ねだるように顔をうずめても、漏れる嗚咽(おえつ)を隠すことはできなかった。それ以上何も聞かずに、ジークヴァルトはやさしく髪をなでてくる。自分が思うよりもずっと、あの神官が怖かったのだ。そう思い当たると、余計に涙が止められなくなった。

「ヴァルト様……」
「大丈夫だ。オレがいる」

 子どものようにしがみついたまま、リーゼロッテは生家をあとにした。沈んだ気持ちを引きずって、馬車は暮れかかった街道を静かに走る。

 膝の上、耳を押し当て、リーゼロッテはずっと規則正しい鼓動を聞いていた。黙って髪を梳いていた手がふと止まる。

「離れて悪かった」
「いえ、ヴァルト様のせいでは……!」

 慌てて顔を上げると、背中に回っていた手が強められた。密着するように抱き寄せられて、ジークヴァルトのシャツをぎゅっとつかみ取る。
 あの神官と遭遇したことを、どうしても話せない。龍が目隠ししていることも、喉が詰まって言葉にできなかった。

「いい、分かっている。言えないのなら無理はしなくて大丈夫だ」

 やさしく頭を撫でられる。再び胸に顔をうずめ、髪を絡めとるジークヴァルトの指の動きを、しばらく黙って見つめていた。

「夜は長い。今のうちに少しでも眠っておけ」
「……はい、ヴァルト様」

 頬に熱が集まるのを感じながらも、素直に頷き返す。ジークヴァルトのこの言葉は、今夜リーゼロッテを抱くという意思表示だ。いつもなら疲れているから休ませてほしいと思うところだが、今日に限っては早くひとつに繋がりたかった。

 身も心も、ジークヴァルトで満たされる。

 閉じた(まぶた)の奥にその瞬間を思い描き、揺れる馬車の中、リーゼロッテは束の間の眠りに落ちた。

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