嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 カイとベッティを含め、デルプフェルト侯爵には子供が九人いる。全員が腹違いと言うのだから、侯爵の酔狂(すいきょう)ぶりも極まっているとしか思えない。

 市井(しせい)生まれのベッティ以外、子の母はみな貴族の出だ。正妻であるカイの母親を除き、すべて愛人の立場となっている。デルプフェルト家の屋敷には近づくことは許されず、それぞれがそれなりの住まいを与えられて、互いが干渉しあうこともない。

 子供たちだけが本家に集められ、次期侯爵の座を競わされている。(しのぎ)を削る子らの様子を、侯爵は日々楽しんでいるようだ。ベッティから見たデルプフェルト侯爵家は、どの貴族よりも異様さが群を抜いていた。

 そんな状況で、兄弟の中でも五男と言えどカイは別格だ。諜報活動に特化したデルプフェルト家の人間として、カイの優秀さは抜きん出ている。母親の生まれは公爵家であるし、血筋から見てもカイが当主を継ぐに相応(ふさわ)しい。

 なのに託宣を受けたという理由で、それは叶わないのだと言う。自分はいずれ星に堕ちるから。そうつぶやいて、カイはいつか小さな笑みを刻んだ。

 その言葉がどんな意味を持つのかは、正直ベッティには分からない。知る必要はないとカイが判断するのなら、無理に聞こうとも思わない。
 ただ、ベッティは約束をさせられた。ベッティがずっと安心して生きていける、そんな居場所を見つけるようにと。やがていなくなる、誰よりも大切なカイのために――

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