嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「いい、面倒だ」
しかし掴んだ手をあっさり緩めると、少年はあっという間に雑踏に埋もれて見えなくなった。その背を従者の男が追っていく。
命拾いしたと息をつき、ベッティは目的の場所へ向かおうとした。振り向きざまに誰かとぶつかる。ベッティは腹いせのようにその男から財布を抜き取った。
「ちっ、シミったれてんな」
素早く逃げ込んだ裏路地で布袋の中身を確かめる。ここ数年は農作物が不作続きで、どこへ行っても不景気だ。こんな下町はいっそうギスギスした雰囲気で包まれていた。
「おい、ガキ。懲りずにこんなところをまだうろちょろしやがって。もう一度痛い目にあいてぇようだな」
はっと振り向くと、夕べシメられた自警団の人間に囲まれていた。逃げ出そうにも襟首を乱暴に持ち上げられる。昨日の恐怖が蘇って、ベッティはじたばたと暴れまくった。
「あ、あたいの父ちゃんはえらい貴族なんだ! 今なら許してやるから今すぐこの手を離せ!」
「こいつが貴族のお嬢サマだとよ」
どっと笑いが起きる。
「嘘じゃない! 証拠だってあるんだっ」
見せつけるように掲げたカフスボタンは、無理やりに男に取り上げられてしまった。
「か、返せ! それはあたいんだっ」
「こんな上等な物、どこで盗みやがった」
「盗んでなんかない!」
それを奪われてしまったら、自分はもう飢え死にするしかない。涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながら、ベッティは死に物狂いで男に掴みかかった。
体当たりの反動で、カフスボタンが男の手を離れる。ベッティと男は、裏路地を跳ねていくそれを同時に追いかけた。
手を伸ばし掴みかけたところを、脇から強く蹴り跳ばされる。地面に打ち付けられて、それでもベッティはボタンの行方を必死に目で追った。
しかし掴んだ手をあっさり緩めると、少年はあっという間に雑踏に埋もれて見えなくなった。その背を従者の男が追っていく。
命拾いしたと息をつき、ベッティは目的の場所へ向かおうとした。振り向きざまに誰かとぶつかる。ベッティは腹いせのようにその男から財布を抜き取った。
「ちっ、シミったれてんな」
素早く逃げ込んだ裏路地で布袋の中身を確かめる。ここ数年は農作物が不作続きで、どこへ行っても不景気だ。こんな下町はいっそうギスギスした雰囲気で包まれていた。
「おい、ガキ。懲りずにこんなところをまだうろちょろしやがって。もう一度痛い目にあいてぇようだな」
はっと振り向くと、夕べシメられた自警団の人間に囲まれていた。逃げ出そうにも襟首を乱暴に持ち上げられる。昨日の恐怖が蘇って、ベッティはじたばたと暴れまくった。
「あ、あたいの父ちゃんはえらい貴族なんだ! 今なら許してやるから今すぐこの手を離せ!」
「こいつが貴族のお嬢サマだとよ」
どっと笑いが起きる。
「嘘じゃない! 証拠だってあるんだっ」
見せつけるように掲げたカフスボタンは、無理やりに男に取り上げられてしまった。
「か、返せ! それはあたいんだっ」
「こんな上等な物、どこで盗みやがった」
「盗んでなんかない!」
それを奪われてしまったら、自分はもう飢え死にするしかない。涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながら、ベッティは死に物狂いで男に掴みかかった。
体当たりの反動で、カフスボタンが男の手を離れる。ベッティと男は、裏路地を跳ねていくそれを同時に追いかけた。
手を伸ばし掴みかけたところを、脇から強く蹴り跳ばされる。地面に打ち付けられて、それでもベッティはボタンの行方を必死に目で追った。