嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
転がるカフスボタンは誰かの足元で動きを止めた。それをひょいとつまみ上げたのは、先ほど出会った少年だった。
「坊ちゃん……それはあっし達のものでして。拾ってくださってありがとうございます」
その身なりを見て、男はへこへこと頭を下げた。少年はカフスボタンを見つめ、次いで男の顔を冷めた瞳のままじっと見上げた。
「違う! それはあたいんだ!」
「うるせぇっ、盗人は黙ってろ!」
這いつくばるベッティの腹めがけて、別の男が足を大きく振りかぶった。衝撃に耐えようと、とっさに歯を食いしばる。
しかし一向にやって来ない痛みを不思議に思って、ベッティは恐る恐る顔を上げた。かばうように少年が、男の足を二の腕で受け止めている。
「な、何を……」
「これは君の?」
突然の問いかけに、ベッティは呆然とただ頷き返した。
「ち、違います、それはそのガキがオレたちから盗んだものでして」
「でたらめ言うな! それは貴族の父ちゃんがあの女、母ちゃんにくれたんだ! 盗人はお前らの方だっ」
「こんのガキが……! その減らず口、今すぐ叩けなくしてやる!」
気色ばんだ男がベッティに向けて拳を振り上げる。間にいた少年が、無駄のない動きで男の腕を背中にねじり上げた。
大の大人が子供に動きを封じられている。その姿がどうにも滑稽に映った。曲がらない方向に腕を曲げられ、絶叫を上げる男をよそに、少年はベッティを静かに見下ろしてくる。
「じゃあ、これは君に返すよ」
差し出されたカフスボタンは、ベッティの手のひらにぽとんと落とされた。放心状態で受け取ったあと、ベッティは慌ててそれを懐にしまい込んだ。
いまだ拘束していた男を地面に転がすと、少年はベッティの手を引き立ち上がらせた。どよめいた仲間たちが、さすがに少年に敵意のまなざしを向けてくる。
「どこの坊ちゃんか知りませんが、オレたちのシマで好き勝手されちゃあ困りますぜ」
屈強な男どもに凄まれるも、少年はまったく意に介した様子もなかった。無防備に背中をさらし、ベッティを庇うような位置に移動する。
「すこし社会勉強を教えてやりましょうか?」
「おい、やめとけよ」
「軽く痛めつけるだけだ」
「坊ちゃん……それはあっし達のものでして。拾ってくださってありがとうございます」
その身なりを見て、男はへこへこと頭を下げた。少年はカフスボタンを見つめ、次いで男の顔を冷めた瞳のままじっと見上げた。
「違う! それはあたいんだ!」
「うるせぇっ、盗人は黙ってろ!」
這いつくばるベッティの腹めがけて、別の男が足を大きく振りかぶった。衝撃に耐えようと、とっさに歯を食いしばる。
しかし一向にやって来ない痛みを不思議に思って、ベッティは恐る恐る顔を上げた。かばうように少年が、男の足を二の腕で受け止めている。
「な、何を……」
「これは君の?」
突然の問いかけに、ベッティは呆然とただ頷き返した。
「ち、違います、それはそのガキがオレたちから盗んだものでして」
「でたらめ言うな! それは貴族の父ちゃんがあの女、母ちゃんにくれたんだ! 盗人はお前らの方だっ」
「こんのガキが……! その減らず口、今すぐ叩けなくしてやる!」
気色ばんだ男がベッティに向けて拳を振り上げる。間にいた少年が、無駄のない動きで男の腕を背中にねじり上げた。
大の大人が子供に動きを封じられている。その姿がどうにも滑稽に映った。曲がらない方向に腕を曲げられ、絶叫を上げる男をよそに、少年はベッティを静かに見下ろしてくる。
「じゃあ、これは君に返すよ」
差し出されたカフスボタンは、ベッティの手のひらにぽとんと落とされた。放心状態で受け取ったあと、ベッティは慌ててそれを懐にしまい込んだ。
いまだ拘束していた男を地面に転がすと、少年はベッティの手を引き立ち上がらせた。どよめいた仲間たちが、さすがに少年に敵意のまなざしを向けてくる。
「どこの坊ちゃんか知りませんが、オレたちのシマで好き勝手されちゃあ困りますぜ」
屈強な男どもに凄まれるも、少年はまったく意に介した様子もなかった。無防備に背中をさらし、ベッティを庇うような位置に移動する。
「すこし社会勉強を教えてやりましょうか?」
「おい、やめとけよ」
「軽く痛めつけるだけだ」