嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「ベッティが安心して生きていける、そんな場所を探すんだ」
「わたしが安心して生きていける場所ぉ……?」
「そう。約束できる?」

 戸惑ってカイを見た。ベッティにしてみれば、ここがもうそんな所になっていたから。

「いつかオレはこの世から消える。このままデルプフェルト家にいてもいいけど、オレがいなくなったら父上(あのひと)にいいように使われるよ?」
「カイ坊ちゃまが消えていなくなる……? そりゃ誰でもひとはいつかは死にますけどぉ」
「そういうことじゃないんだ」

 小さく笑みを浮かべると、カイはどこか遠くを見やった。

「オレはいずれ星に堕ちるから」

 まったく意味が分からなかった。だがカイのただならない様子に、それ以上何も問えなくなる。

「……分かりましたぁ。それに期限はありますかぁ?」
「オレが消えるのは明日かもしれないし、十年後かもしれない。それまでに行き先を決めてくれると、オレも安心できるかな?」
「安心、ですかぁ?」
「そう、可愛い妹の()(すえ)だからね」

 ふっとやさしい笑顔になって、カイは頭をいい子いい子と撫でてくる。ベッティのほっぺたが、驚きでぷっと大きく膨らんだ。()れたビョウのように、そこは真っ赤に染まっている。

「はは、ベッティ、すごく変な顔になってるよ」

 出会った当初、カイは全く笑わない少年だった。誰に対しても冷めた視線を向けていて、ベッティに会う時も、琥珀の瞳は変わらず冷たい色を放っていた。

 それがいつからだろうか? 処世術(しょせいじゅつ)のように、カイは頻繁に笑うようになった。その笑顔が偽りの仮面であることを、ベッティはよく知っている。
 そんな中ベッティにだけ、カイは()の笑顔を時折くれた。そのことがどうにもうれしくて仕方がない。

< 138 / 305 >

この作品をシェア

pagetop