嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
この小さな異形の者は、ダーミッシュ領で出会ってからずっとルチアについてきていた。初めは戸惑いもしたが、今ではルチアにとって本心を見せられる唯一の相手だ。
もうすぐ社交界デビューの夜会に出なくてはならない。このまま自分は貴族として生きていくのだろうか。漠然とした不安ばかりが押し寄せる。
「母さん……本当にこれでいいの……?」
アニサはずっと何かから逃げているようだった。この鮮やかな赤毛を隠すために、ルチアは幼いころからかつらをかぶらされ、ことさら神殿に近づくことを嫌がった。生まれつきのあざも、絶対に見られないようにと、しつこいくらいに何度も何度も言い含められた。
子爵家に来て以来かつらは使うことはなくなったが、体のあざだけは世話をしてくれる侍女にも、いまだ見せてはいない。それを知られると、何か不吉な出来事が起こるような気がして、どうしても怖く思えてしまう。
(それに初め母さんは、手に職をつけて早くイグナーツ様の元を離れるようにって言ってたのに)
自分が死んだら、今まで通りあざを隠し、ひと所に留まらない生活を続けるように。ダーミッシュ領に移った当初は、アニサはずっとそう言い続けていた。
にもかかわらず母が遺した手紙には、今後はすべてイグナーツに従うようにとだけ書かれていた。ルチアをブルーメ家に連れてきて以来、そのイグナーツは一度も姿を現さないでいる。
「わたし、本当にどうしたら……」
使用人の気配を感じて、ルチアは慌てて涙をぬぐった。
もうすぐ社交界デビューの夜会に出なくてはならない。このまま自分は貴族として生きていくのだろうか。漠然とした不安ばかりが押し寄せる。
「母さん……本当にこれでいいの……?」
アニサはずっと何かから逃げているようだった。この鮮やかな赤毛を隠すために、ルチアは幼いころからかつらをかぶらされ、ことさら神殿に近づくことを嫌がった。生まれつきのあざも、絶対に見られないようにと、しつこいくらいに何度も何度も言い含められた。
子爵家に来て以来かつらは使うことはなくなったが、体のあざだけは世話をしてくれる侍女にも、いまだ見せてはいない。それを知られると、何か不吉な出来事が起こるような気がして、どうしても怖く思えてしまう。
(それに初め母さんは、手に職をつけて早くイグナーツ様の元を離れるようにって言ってたのに)
自分が死んだら、今まで通りあざを隠し、ひと所に留まらない生活を続けるように。ダーミッシュ領に移った当初は、アニサはずっとそう言い続けていた。
にもかかわらず母が遺した手紙には、今後はすべてイグナーツに従うようにとだけ書かれていた。ルチアをブルーメ家に連れてきて以来、そのイグナーツは一度も姿を現さないでいる。
「わたし、本当にどうしたら……」
使用人の気配を感じて、ルチアは慌てて涙をぬぐった。