嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
◇
夏に新設した温室で、ブルーメ子爵は花々の手入れをしていた。雪深くなるこれからの季節は、例年なら庭いじりもできなくなる。しかしこの温室のお陰で、年中植物が育てられるようになった。そのことがうれしくて仕方がない。
ルチアをブルーメ家に迎えて以来、イグナーツからの援助金が驚くほど増やされた。こんな立派な温室が建てられたのも、その恩恵からだ。
奥まった一角には、ルチアがいちばん好きな花を植えた。温室の中でもひときわ目を引く、色鮮やかな赤い花弁のプリムラだ。
美しく咲き誇るプリムラを見つめ、子爵は来る白の夜会に思いを馳せていた。自分の娘として、ルチアを社交界デビューさせなくてはならない。彼女の容姿を見て、いらぬ詮索をしたがる輩も出てくるだろう。
何しろ子爵自身が思ったことだ。燃えるような赤毛に金の瞳を持つルチアを見れば、王族の血を引くことは誰の目にも明らかだ。彼女の稀有な色彩は、あまりにも先王ディートリヒに似すぎている。
初めは先王の子かと思った。もしくは兄のバルバナスの隠し子か、はたまたその父フリードリヒの遺児であろうか。
しかし彼女に好きな花は何かと問うたとき、子爵はルチアの父親が誰であるかを理解した。
生まれながらの王族には、みな象徴となる花が決められる。ハインリヒ王はカサブランカであるし、ディートリヒはダンディライオン、バルバナスはカレンデュラと言ったように。
そんな中で赤いプリムラを持つ王族がかつて存在した。ある年代から上の貴族なら、誰もが知るであろう王族だ。
夏に新設した温室で、ブルーメ子爵は花々の手入れをしていた。雪深くなるこれからの季節は、例年なら庭いじりもできなくなる。しかしこの温室のお陰で、年中植物が育てられるようになった。そのことがうれしくて仕方がない。
ルチアをブルーメ家に迎えて以来、イグナーツからの援助金が驚くほど増やされた。こんな立派な温室が建てられたのも、その恩恵からだ。
奥まった一角には、ルチアがいちばん好きな花を植えた。温室の中でもひときわ目を引く、色鮮やかな赤い花弁のプリムラだ。
美しく咲き誇るプリムラを見つめ、子爵は来る白の夜会に思いを馳せていた。自分の娘として、ルチアを社交界デビューさせなくてはならない。彼女の容姿を見て、いらぬ詮索をしたがる輩も出てくるだろう。
何しろ子爵自身が思ったことだ。燃えるような赤毛に金の瞳を持つルチアを見れば、王族の血を引くことは誰の目にも明らかだ。彼女の稀有な色彩は、あまりにも先王ディートリヒに似すぎている。
初めは先王の子かと思った。もしくは兄のバルバナスの隠し子か、はたまたその父フリードリヒの遺児であろうか。
しかし彼女に好きな花は何かと問うたとき、子爵はルチアの父親が誰であるかを理解した。
生まれながらの王族には、みな象徴となる花が決められる。ハインリヒ王はカサブランカであるし、ディートリヒはダンディライオン、バルバナスはカレンデュラと言ったように。
そんな中で赤いプリムラを持つ王族がかつて存在した。ある年代から上の貴族なら、誰もが知るであろう王族だ。