嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 その者の名はウルリヒ・ブラオエルシュタイン。中性的で線の細い男だった。その美しい容貌は、女のみならず男をも魅了してやまなかったほどだ。
 魅入られた貴族たちは彼の寵愛を奪い合い、多くの人間が破滅の道をたどっていった。それを愁いたウルリヒは、自ら後宮の奥にひきこもったらしい。誰とも添い遂げることなく、そのままひとりさびしく天へと召されたそうだ。

 ブルーメ子爵は社交に疎く、すべて噂話で聞いただけだ。だが若い時分に会ったウルリヒは、確かに息をのむほど美しく、神々しくこの目に映ったことを覚えている。

(ルチアがウルリヒ様の子となると、難しい立ち位置であるな……)

 ウルリヒは先々代の王フリードリヒの叔父だ。移り変わった御代を思うと、今さらルチアを王族として受け入れてもらうのはなかなかに困難なことだろう。

 ルチアのような落胤(おとしだね)が、下位の貴族の養子となることは歴史上ままあることだ。そこからさらに上位の貴族の養子に出したり婚姻を結ぶなどして、段階を踏んで地位を上げることもよく成される。ブルーメ家はその役割の一端を担うことになったのだ。

 ルチアを迎えた日、それが分かった上で子爵はすべてを受け入れた。上手く立ち回る自信はなかったが、できないという選択肢を一貴族として取れるはずもない。

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