嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「お義父様、お呼びですか?」
「ルチアの好きなプリムラが咲いたのでな。見せたいと思ったのだよ、うん」
使用人に呼びに行かせたルチアが、遠慮がちに声をかけてきた。初めに比べると随分打ち解けてくれたが、互いにまだ距離を測りかねている状況だ。
「綺麗……母さんにも見せてあげたい……」
「母さんとな?」
「赤いプリムラは、亡くなった母がいちばん好きな花だったんです」
「そうであったか」
その言葉は、さらにルチアがウルリヒの子であることを確信させる。ルチアの母親が誰なのかを知らされてはいないが、貴族であることに間違いはなさそうだ。赤いプリムラはウルリヒの象徴だ。彼に魂を奪われた人間ならば、この花を愛するのも当然のことと思えた。
「ここの花壇の手入れはわたしがしてもいいですか?」
「ルチアは間もなく社交界にデビューする身であるからして、土いじりはもう卒業せねばな。これから花は淑女として愛でるだけにするが良いぞ、うん」
「わかり……ました」
悲しそうに俯いたルチアを見て、子爵も残念な気持ちになった。ふたりで花壇の世話をするのは、子爵にしてみても非常にたのしい時間だった。
しかし王前で認められれば、ルチアも立派な貴族の一員となる。いつまでも市井育ちの感覚でいさせる訳にはいかなかった。
「その代わり、ここへは好きなときに来るといい。植えてほしいものがあったら、遠慮なく言うのだぞよ」
「ありがとうございます、お義父様」
ぎこちない笑顔を作ったルチアは、子爵には今にも泣きそうに見えた。
改めて心に誓う。縁を得たからには、父としてこの娘を守ってみせよう。例えそれが、束の間の絆であったとしても。
子爵はルチアとふたり並んで、長いことプリムラの花を眺めやっていた。
「ルチアの好きなプリムラが咲いたのでな。見せたいと思ったのだよ、うん」
使用人に呼びに行かせたルチアが、遠慮がちに声をかけてきた。初めに比べると随分打ち解けてくれたが、互いにまだ距離を測りかねている状況だ。
「綺麗……母さんにも見せてあげたい……」
「母さんとな?」
「赤いプリムラは、亡くなった母がいちばん好きな花だったんです」
「そうであったか」
その言葉は、さらにルチアがウルリヒの子であることを確信させる。ルチアの母親が誰なのかを知らされてはいないが、貴族であることに間違いはなさそうだ。赤いプリムラはウルリヒの象徴だ。彼に魂を奪われた人間ならば、この花を愛するのも当然のことと思えた。
「ここの花壇の手入れはわたしがしてもいいですか?」
「ルチアは間もなく社交界にデビューする身であるからして、土いじりはもう卒業せねばな。これから花は淑女として愛でるだけにするが良いぞ、うん」
「わかり……ました」
悲しそうに俯いたルチアを見て、子爵も残念な気持ちになった。ふたりで花壇の世話をするのは、子爵にしてみても非常にたのしい時間だった。
しかし王前で認められれば、ルチアも立派な貴族の一員となる。いつまでも市井育ちの感覚でいさせる訳にはいかなかった。
「その代わり、ここへは好きなときに来るといい。植えてほしいものがあったら、遠慮なく言うのだぞよ」
「ありがとうございます、お義父様」
ぎこちない笑顔を作ったルチアは、子爵には今にも泣きそうに見えた。
改めて心に誓う。縁を得たからには、父としてこの娘を守ってみせよう。例えそれが、束の間の絆であったとしても。
子爵はルチアとふたり並んで、長いことプリムラの花を眺めやっていた。