嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
 翌日もジークヴァルトの顔を見ないまま朝を迎えた。隣で眠っていた形跡もなく、それどころか部屋にも戻ってこなかったようだ。

「そんなに被害が大きいのかしら……」
「橋がひとつ流されたそうです。マテアスの話では人的被害はなかったものの、交通が分断されてそちらの対応に追われているとのことでした」
「誰も怪我をしなかったのは不幸中の幸いだけれど……橋が渡れないのではきっとみな困っているわね」
「それでマテアスからの伝言なのですが、旦那様はしばらくの間、戻れても夜遅くになるとのことで、奥様は待たずに先にお休みになってくださいとのことです」
「そう……。ねぇエラ、わたくしは本当に何もしないでいいのかしら?」

 これまでのように婚約者の立場だったら、口出しなど余計なことだろう。だがジークヴァルトの妻となった今、自分にもやるべきことはあるはずだ。

「旦那様がお戻りになったときに、笑顔で迎えて差し上げるのがいちばんですよ。きっとおよろこびになられます」
「でも先に寝てしまったらそれもできないわ」

 思わず唇を尖らせる。

「ご存じないのですか? 奥様の寝顔はまるで天使のようで、眺めているだけでそれはそれは癒されるのですよ」

 微笑ましそうに返されて、リーゼロッテは口ごもった。夜中に目覚めて目が合うということは、ジークヴァルトにじっと寝顔を見られているということだ。

「状況はわたしからお知らせします。どうぞ今は信じてお待ちください」
「分かったわ……でも何かあったら、真っ先にわたくしに教えてちょうだいね」

 納得したふりで頷いたあとも、ひとり考えを巡らせる。ただ待っているだけでは、ジークヴァルトの妻になった意味がない。

(領地のためにわたしができること……)

 橋を再建するには物資が必要だ。人手もいるだろうし、分断地域への支援も欠かせない。

(フーゴお義父様に援助を頼もうかしら)

 義父なら快く受けてくれるだろう。名案を思いついたと、リーゼロッテはさっそく(ふみ)をしたためた。

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