嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 馬を駆り、街道をひた走った。そびえ立つ王城の影が視界に入るころ、そこでようやくカイは息ができるようになった気がした。
 王城に着き、奥の部屋に通される。約束の時間ちょうどに到着した自分を、無性にほめてやりたい気分だった。

「ハインリヒ王、ご報告に上がりました」
「今は非公式な場だ。いつも通りでいい」

 きっちりと騎士の礼を取ったカイに、ハインリヒはどこか遠くを見る瞳を向けてきた。王位に就いてからというもの、ハインリヒは近寄りがたい雰囲気を(まと)うようになった。ディートリヒ王に感じていたものと同じ、畏怖(いふ)の念を否応なしに抱かされる。

「ティビシスでは何か情報は得られたのか?」
「女神神殿がラウエンシュタイン(ゆかり)の地であることはわかりましたが、託宣に関することは何も……」
「そうか。引き続き調査に当たってくれ」
「仰せのままに」
「それでだ、カイ。残る託宣の内容は、やはり口には出せないのだな?」

 託宣の書庫で、カイは詳細不明の託宣を新たにふたつ見つけた。そのうちのひとつはルチアが受けた託宣だ。残るひとつがカイの対となる託宣を受けた者であり、今調査しているものだった。

「……やはり無理なようです」

 口を開きかけ、言葉が出ないのを確かめる。龍に目隠しをされるため、この託宣の内容を知る者はカイ以外にはいなかった。

「分かった。それが龍の意思と言うなら仕方がない。だが龍は気まぐれだ。もし口に出せるときがきたら、報告を忘れるなよ」
「はい、必ず」

 その時には、自分はすでに星に堕ちているかもしれない。答えながらもそんなことを思う。隠された託宣はカイの対となる相手だ。カイのために用意されたのだから、真実はカイだけが知っていればいい。
 ハインリヒがこの事を知ったなら、カイ自身が調査を続けることを止めにかかるかもしれない。自由に動けなくなるのは勘弁だったので、龍の目隠しは(かえ)って好都合だった。

「ルチア・ブルーメはどうしている?」
「報告では白の夜会のために王都のタウンハウスに移動したようです」
「彼女に関する噂には気を配ってくれ。詮索されたところで、いらぬ火種にはならないとは思うが……」

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