嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 何かを言いかけたリーゼロッテが、くしっとひとつくしゃみをした。小さく身震いする姿に、ふと思い出す。執務机の下にしまってあったブランケットを取り出すと、ジークヴァルトは大きすぎるそれでリーゼロッテの体を包み込んだ。

「これはわたくしが東宮で編んでいた……」
「ああ、冬の間、ずっと使っていた」

 年のはじめ、ジークヴァルトの誕生日に渡されたものだ。しかしあの時、リーゼロッテは神殿に囚われていた。当時を思い出したのか、緑の瞳が僅かに揺れる。潤みだした(まなこ)そのままに、リーゼロッテは反して明るい笑顔となった。

 ブランケットを大きく広げ、リーゼロッテはジークヴァルトの背にそれをかけた。次いで自ら膝に収まって、ジークヴァルトの胸に身を寄せてくる。

「このブランケット、調子に乗って編んでいたら、不格好に大きくなってしまいましたでしょう? ですからわたくし、ずっとこうやってヴァルト様と一緒に(くる)まりたいって思っていたのです」

 はにかむ笑顔にぎゅっと心の奥を掴まれる。寝室に連れ戻り、今すぐ組み敷きたくなる衝動を懸命に抑えた。執務中はさぼらないようにとマテアスが目を光らせている。それに今は夜会前とあって、リーゼロッテの体調を整えるため、まぐあい禁止令が出されている最中だ。

「リーゼロッテ……」

 耳元で囁き、首筋に指を滑らせる。くすぐったそうに逃げる肩を抱き寄せ、やわらかな唇を(ついば)んだ。


 (くる)まったブランケットの陰に隠れて、ふたりは何度も秘密の口づけを交わした。

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