嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 ふいに机に置かれた羽ペンが、ひとりでにペン立てから浮き上がった。

「もうあなた、またそんな悪戯して」

 小さな異形の者が胸に羽ペンを抱えている。見咎(みとが)めると、慌てた小鬼は机からぴょんと飛び降りた。

「あっ、こら、駄目よ! 無くしたりしたらわたしが怒られるじゃないっ」

 取り返そうと、とっさに腕を伸ばした。異形の悲鳴がぴぎゃっと短く響く。その時にはすでに、金色の火花がこの指先から飛び散ったあとだった。
 一瞬の出来事に、ルチアはそのままの姿勢で固まった。羽ペンを放り出した小鬼は、逃げ込んだカーテンの影でぴるぴると震えている。

「ごめんなさい、わたしあなたを傷つけるつもりじゃ……!」

 駆け寄ると、小鬼はさらに身を縮こまらせた。

「わざとじゃないの。本当よ、信じて」

 自分でも何が起きたか分からない状況で、ルチアは必死に謝った。それでも怯えた小鬼は奥から出てこようとしない。せっかく(なつ)いてくれた小鬼を失うことが怖くなって、ルチアの金色の瞳から涙があふれ出した。

「信じて、お願い……わたしを見捨ててひとりにしないで……」

 嗚咽(おえつ)をこらえていると、床についた手にあたたかい熱が触れたように感じた。見ると異形が瞳を潤ませ、そこに自身の手を添えている。
 懸命に慰めてくれている。そんな気がして、両手のひらに小鬼を(すく)い上げた。

「ありがとう」

 至近距離で見つめ合い、ルチアは異形とおでこをくっつけ合った。

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