嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
 揺れる馬車の中、眉をひそめているベッティの視線を感じた。ルチアを抱えて現れたカイに、意表を突かれたのかもしれない。それでもカイは、流れる景色に夢中になっているルチアの横顔を、向かいの席から黙って眺めていた。

「ねぇ、カイ。今からどこに行くの?」
「ま、いいからいいから。着いてからのお楽しみってことで」
「何よ、それ」

 頬を膨らませたルチアは、はっとして不自然に俯いた。

「申し訳ございません。わたくしつい調子に乗ってしまって……」
「どうしたの、急に?」
「だってカイは……デルプフェルト様はわたしよりも偉い方だから……」
「いいよ、そんなこと気にしなくて」
「だけど……」

 躊躇するルチアに大丈夫だと笑って見せる。

「少なくとも今はね」
「本当にいいの?」

 不安げなままルチアは隣に座るベッティに視線を向けた。ブルーメ子爵にチクられるのが嫌なのだろう。

「ご心配なさらなくてもベッティは誰にもしゃべったりいたしませんよぅ」
「そうそう、ベッティは口が堅いからね」

 小首をかしげたルチアが、カイとベッティを交互に見やる。

「……去年、カイの家の夜会に呼ばれた時も思ったけど、ふたりは随分と仲がいいのね」
「わたしは元々デルプフェルト家から派遣されている侍女ですからぁ」
「デルプフェルト家から? そう……それは分かったけど、でもどうしてわたしのところに?」
「ルチアのことはイグナーツ様に頼まれてるんだ。自分がいない間はよろしくって」
「そう、なの……」

 分かったような分からなかったような、そんな返事をルチアは返した。

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