嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
「ここは?」
「オレの別宅。そのままの恰好(かっこう)じゃ目立つからとりあえずここで着替えて。じゃあベッティ、あとはよろしく」
「承知いたしましたぁ」

 到着したいつもの隠れ家で、ルチアを奥の部屋へと案内する。リープリングは知らない人間が来たときは、出てこないよう教え込んである。物陰に隠れて様子を伺っているが、待っている間にカイが相手をしてくれるだろう。

 所狭しと置かれた衣装の中から、町娘に見える地味目な服を引っ張り出した。この隠れ家には変装グッズをはじめ、諜報活動で使用するありとあらゆる物が置かれている。

「まずはこちらにお着替えになってくださいましねぇ」
「これは……街中に連れてってもらえるの?」
「そのようですねぇ。ルチア様は貴族街の方がよろしかったですかぁ?」
「そんなこと! わたし絶対に下町のほうがいい!」
「ふふぅ、ルチア様は本当に変わった方ですねぇ」

 大概の者は贅沢できる方に魅力を感じるだろうに。もっとも同じ立場だったとしたら、ベッティも迷わず下町を選ぶのだが。

「お着替え、お手伝いいたしましょうかぁ?」

 突っぱねられるのは分かっていたが、立場上とりあえず聞いてみる。

「いいわ、自分でできるから」
「承知いたしましたぁ。脱いだものはわたしが整えますので、そのままにしておいてくださいましぃ」

 今さら隠す意味などないのだが、ルチアにしてみれば体のあざを知られていないと思っているのだ。おとなしく部屋を退出すると、ベッティは扉の前で静かに待機した。

「えっ、あっ、ぎゃあっ!」

 突然ルチアの悲鳴が聞こえて、迷わず中へ飛び込んだ。下着姿のルチアが、呆然と尻もちをついている。

「何ごとですかぁ?」
「ね、(ねずみ)が突然上から降ってきてっ」
「ああ、寒さが増すと中に入り込む数も増えるんですよねぇ。そう言えば今年はまだその対策をしていませんでしたぁ」

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