嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
 向かった先のこんがり亭で、ルチアは始終はしゃいでいた。待っていたダンたちと感動の再会を果たし、特にフィンとは思い出話に花が咲いたようだ。

 あいにくイグナーツはまだ戻ってきておらず、仕方なくカイはルチアを連れて再び辻馬車へと乗り込んだ。ふたりとも平民の装いなので、貴族の馬車を呼ぶわけにもいかなかった。
 ベッティは隠れ家で留守番をさせてある。今頃は鼠の駆除に格闘していることだろう。

「カイ、今日はこんがり亭に連れてってくれてありがとう! わたし勝手に出てっちゃったこと、ずっとフィンたちに謝りたいって思ってたの」
「そっか、ならよかった」

 辻馬車を降り、しばらくは歩きでの移動だ。ルチアは足取りも軽く、踊りだしそうな勢いで先へ先へと進んでいく。

(空振りだったけどルチアもたのしそうだし……まぁ、今日はこれで良しとするか)

 今から着替えてブルーメ家のタウンハウスに送り届けるとなると、着くころには日が沈む時刻になっていそうだ。それでもうれしそうなルチアを前にして、いたずらに()かすのも無粋(ぶすい)に思えた。カイの私有地に入り、誰もいない森の一本道を、ふたりはのんびりと進んでいった。

 木の葉のざわめきにまぎれた違和感に、ふと耳を澄ませる。複数の不穏な気配を遠くに感じ、先をひとりで行きすぎているルチアの姿をとっさに探した。

「きゃあぁっ」
「ルチア!」

 舌打ちと共に駆けだした。隠れ家を目前にして、少し気を抜きすぎていたのかもしれない。

 木々の陰から男が数人現れて、ルチアを取り囲むように迫っている。腕を掴まれたルチアが、さらに大きな悲鳴を木霊させた。

(あいつら、全員取り憑かれてる)

 近づくにつれカイは確信した。あの男たちは異形の者に意識を飲まれている。手の内に力をため込みながら、カイはルチア目指して疾走した。

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