嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 自分を取り囲んだ暗い影を背負った男たち。その腕が数本、うつろな瞳で延ばされた。乱暴に掴まれた肩の痛み。手首をきつくねじり上げられて、ルチアは思わず悲鳴を上げた。
 じっと手のひらを見やる。あの瞬間ここから溢れた金の輝き。大きさはまるで違ったが、それは小鬼に向けて放った火花と同じものだった。
 弾かれるように吹き飛んだ男たちは、雪積もる森の地面で死体のように横たわっていた。それを幻だったと片付けるには、あまりにも臨場感がありすぎる。

 噛みしめそうになった唇に、薄紙がそっと押し当てられた。余分な紅を移すため、紙越しにベッティの指が触れてくる。ゆっくりとずらされていく指先に、ルチアは再び身じろいだ。

(カイはなんであんなこと……)

 思い出すたび鼓動が跳ねる。なぜああなったのか、ルチアにはよく分からない。気づいたときにはもう、カイに口づけられていた。

 逃げ出せない背中に回った腕の力。髪の奥、もぐりこんだ手のひらと、耳に触れる指の感触。重ねた唇の弾力に、漏れるカイの吐息の熱さ。

 すべてがまだここに残っていて、あれが夢だったとはどうしても思えない。
 次に会ったとき、何を言えばいいのだろうか。今日の夜会にはカイも出るらしい。

「さぁ、これでお化粧は完了ですぅ」

 弾む声に我に返った。ベッティが()けた先、鏡に映った自分と目を合わせる。そこにはお人形のように綺麗な子がいて、ルチアは驚きで大きく目をしばたたかせた。

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