嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
「それでリーゼロッテ様は、旦那様のために何かして差し上げたいと、そうおっしゃるのですね?」
「ええ、公爵夫人になったからには領地の役にも立ちたくて。なのにちっとも上手くいかなくって、わたくしどうしたらいいのか……」

 しょんぼりとうなだれるリーゼロッテを前に、エマニュエルは微笑ましそうに口角を上げた。先ほどのふたりの様子を見た限りでは、すでに十分力になっているように思える。
 ジークヴァルトの不器用な愛が、ようやくリーゼロッテに通じたのだ。ずっともどかしく見ていたエマニュエルにしてみれば、これはもう大躍進を遂げたといったところだ。

 そうは言ってもリーゼロッテの気持ちも無下(むげ)にはできない。ジークヴァルトに向けられたその思いを、なんとか形にしてやりたかった。

「リーゼロッテ様、女には女のやり方がございます。少しわたしと一緒にお勉強いたしましょうか」

 前のめりに頷いたリーゼロッテを連れて、エマニュエルは公爵家の書庫へと移動した。

「リーゼロッテ様もご存じのように、フーゲンベルク家では家令であるマテアスが補佐する形で、旦那様を中心に領地経営を行っております。他領では執務のすべてを使用人任せにしたり、女主人が取り仕切っている家も見受けられますが、公爵家ではそのようなことはございません。ここまではよろしいですね?」

 エマニュエルの言葉に、リーゼロッテが神妙に頷き返す。

「そうなれば、女主人となられたリーゼロッテ様が(にな)うべき仕事は、社交にあります」
「社交に……?」
「ええ、そうです。社交を通して様々な情報を仕入れ、公爵家の(えき)となる家と親しくするのが主な役割となります。本来なら、まずはおふたりの婚姻のお披露目(ひろめ)を兼ねて、夜会を開き懇意(こんい)にしている貴族を招くべきなのですが……」

 ジークヴァルトとリーゼロッテの取り合わせでは、異形の者のトラブルが起こる懸念がある。そんな事情もあり、公爵家主催で大規模な夜会は開けないでいた。今までもよその夜会に参加したときは、最小限の時間にとどめて早めにお(いとま)していたくらいだった。

「身内の小さな茶会なら開けそうかしら……?」
「お披露目の意味としては非効率ですね。数を招くには幾度も開く必要がありますし、呼ぶ面子(めんつ)にも気を配らないとなりません。それに呼んだ順番で、軋轢(あつれき)を生む可能性もございます」

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