嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「白き貴族たちを心より歓迎する。さあ、みなの者、宴の始まりだ!」
ハインリヒ王の重い声が響き渡った。高まった歓声と共に、貴族たちが各々動き始める。ここから先は自由行動だ。社交のおしゃべりに、飲食に、それぞれが興じていく中、ダンスフロアがいちばんの混雑ぶりとなるのは毎年のことだった。
特に婚活中の貴族は、積極的にデビュタントをダンスに誘う。入り乱れる貴族たちの中でも、纏った白い衣装で誰がデビュタントであるかは一目瞭然だ。
「オレたちも行くぞ」
「はい、ヴァルト様」
差し伸べられた手を取り、フロア中心へと向かう。ほどなくしてオーケストラの演奏が始まった。公の場でふたりして踊った機会は、すべて合わせても両手で数えられる程度だ。きっと覚えていられないくらいの思い出が、これからはもっと増えていくのだろう。そう思うとしあわせな気持ちでいっぱいになった。
「ヴァルト様……わたくしが年を取ってしわくちゃになっても、こうして一緒に踊っていただけますか?」
緩やかなワルツが奏でられる中、腰に回った手に力が入る。
「だからそういう可愛いことは、帰ってからにしろと言っただろう」
「ふひぁっ」
耳元で囁かれ、吐息のついでに青の力を吹き込まれた。周辺の異形がざわついたのが分かって、赤くなった顔のままリーゼロッテは唇を尖らせる。
「ヴァルト様こそ、こんな場所で呪いを発動させないでくださいませね」
「そう思うなら言動に気をつけることだ。次は休憩室に連れ込むからな」
「なっ」
魔王の笑みを浮かべるジークヴァルトを前に、あうあうと口だけを動かした。とっさに言い返すことができない自分が、なんだか悔しくて仕方がない。
こういった王家主催の大規模な夜会では、休憩室が開放されている。疲れた者や酔っぱらった者が宿泊できるようになっているが、一夜の火遊びで使用する貴族も少なからずいた。
今ではふたりで泊ったとしても、見咎められることはないだろう。しかし中で起きていることを詮索されるのかと思うと、どうにも居たたまれなさすぎる。
ハインリヒ王の重い声が響き渡った。高まった歓声と共に、貴族たちが各々動き始める。ここから先は自由行動だ。社交のおしゃべりに、飲食に、それぞれが興じていく中、ダンスフロアがいちばんの混雑ぶりとなるのは毎年のことだった。
特に婚活中の貴族は、積極的にデビュタントをダンスに誘う。入り乱れる貴族たちの中でも、纏った白い衣装で誰がデビュタントであるかは一目瞭然だ。
「オレたちも行くぞ」
「はい、ヴァルト様」
差し伸べられた手を取り、フロア中心へと向かう。ほどなくしてオーケストラの演奏が始まった。公の場でふたりして踊った機会は、すべて合わせても両手で数えられる程度だ。きっと覚えていられないくらいの思い出が、これからはもっと増えていくのだろう。そう思うとしあわせな気持ちでいっぱいになった。
「ヴァルト様……わたくしが年を取ってしわくちゃになっても、こうして一緒に踊っていただけますか?」
緩やかなワルツが奏でられる中、腰に回った手に力が入る。
「だからそういう可愛いことは、帰ってからにしろと言っただろう」
「ふひぁっ」
耳元で囁かれ、吐息のついでに青の力を吹き込まれた。周辺の異形がざわついたのが分かって、赤くなった顔のままリーゼロッテは唇を尖らせる。
「ヴァルト様こそ、こんな場所で呪いを発動させないでくださいませね」
「そう思うなら言動に気をつけることだ。次は休憩室に連れ込むからな」
「なっ」
魔王の笑みを浮かべるジークヴァルトを前に、あうあうと口だけを動かした。とっさに言い返すことができない自分が、なんだか悔しくて仕方がない。
こういった王家主催の大規模な夜会では、休憩室が開放されている。疲れた者や酔っぱらった者が宿泊できるようになっているが、一夜の火遊びで使用する貴族も少なからずいた。
今ではふたりで泊ったとしても、見咎められることはないだろう。しかし中で起きていることを詮索されるのかと思うと、どうにも居たたまれなさすぎる。