嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 無表情のまま踊るふたりは、まるで機械仕掛けで動いているかのように見えた。長いよそ見に、ザイデル公爵の足を踏みそうになる。リーゼロッテは慌てて自分の足元へと意識を戻した。

「くじで決めたのですよ」
「くじで……? 何をお決めになったのですか?」

 ふいに言われ、良く分からずに問い返す。くくっと思い出し笑いをされて、さらに小首をかしげた。

「いや、フーゲンベルク公爵が」

 そこまで言って、再び思い出し笑いを挟まれる。(こら)えるように奥歯を噛みしめ、ようやくザイデル公爵は続きを口にした。

「貴女をダンスに誘うのは、夜会ごとにひとりまでだと言い張るものですからね」

 何があったかを理解して、リーゼロッテの頬が朱に染まった。心配性のジークヴァルトが、前もって貴族たちに根回しをしたのだろう。

「いや、事情は聞いていますよ。夫人は体がお弱いとのこと。何しろ貴女と踊りたいと思っている男は山ほどいますからな。制限を設けなければ夜会に混乱をきたすでしょう」

 混乱するほどのことはないとは思うが、そういう話になっているのなら素直に頷かざるを得ない。

「それで今宵はこのわたしが貴女と踊る権利を得たという訳です」
「そ、そうでしたの」

 なんともリアクションしにくい話だ。どうしてそんなことまでして自分と踊りたいのかが理解できない。この世界で自分の容姿はイケてない部類に入るのだと、リーゼロッテはいまだにそう信じ込んでいた。

「ザイデル公爵様とこうして踊らせていただいて、わたくしもとても光栄ですわ」
「それはうれしい限り」

 微笑み合って、さらに踊り続けた。緊張が(ほぐ)れてきたのか、後半はステップも軽やかだ。

(あ、肩に黒いモヤが……)

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