嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「これはフーゲンベルク公爵夫人。ご結婚されてからはお初かな」
「ティール公爵様、ご挨拶が遅れ申し訳ございません」
「いや何、そんなことは気にせずとも」
白髪交じりのティール公爵は、ザイデル公爵と違って柔和な雰囲気を持つ男だった。ちょっとふくよかな見た目が、余計そう思わせているのかもしれない。ジークヴァルトがいかに若くして公爵になったのかを再認識する。リーゼロッテの生家も含め、ほかの公爵たちはみな自分の親世代だ。
「夫人の次のダンスのお相手は、わたしに決まっていますのでな。今から楽しみで仕方がない」
「そ、そうでしたの。わたくしも心待ちにしておりますわ」
淑女の笑みを張り付けたリーゼロッテとは対照的に、ジークヴァルトが眉間に大きくしわを寄せた。当たり障りのないように受け答えしているというのに、これではすべてが台無しだ。
「それはそうと、母が夫人を茶会に招待したいと申しておりましてな」
「ティール公爵様のご母堂様が?」
「よければお受けしていただけますかな?」
「もちろんですわ。構いませんわよね? ジークヴァルト様」
「……ああ」
低い声で答えたジークヴァルトは、どう見ても不承不承の様子だ。
「ふむ。それならばフーゲンベルク公爵にも招待状を送るよう、母には伝えておきましょう」
「お、お気遣い痛み入ります」
今日はジークヴァルトのせいで、頭を下げてばかりいるような気がする。こんなことで、今までどうやってジークヴァルトは社交を乗り切ってきたのだろうか。そう不思議に思えてくる。
しかしなんてことはない。ジークヴァルトがポンコツになるのは、リーゼロッテが絡んだ時というだけの話だ。
ふとどこからか視線を感じて、リーゼロッテは何とはなしに遠くを見やった。ダンスフロアを越えた向こう、壇上の玉座で悠然と頬杖をつくハインリヒが目に入る。
小さく笑んでくれたような気がして、リーゼロッテは王に向けて美しい礼を取った。そこをすかさずジークヴァルトに腰をさらわれて、不格好な態勢でその胸へと倒れ込む。
「もう、ヴァルト様!」
「ティール公爵様、ご挨拶が遅れ申し訳ございません」
「いや何、そんなことは気にせずとも」
白髪交じりのティール公爵は、ザイデル公爵と違って柔和な雰囲気を持つ男だった。ちょっとふくよかな見た目が、余計そう思わせているのかもしれない。ジークヴァルトがいかに若くして公爵になったのかを再認識する。リーゼロッテの生家も含め、ほかの公爵たちはみな自分の親世代だ。
「夫人の次のダンスのお相手は、わたしに決まっていますのでな。今から楽しみで仕方がない」
「そ、そうでしたの。わたくしも心待ちにしておりますわ」
淑女の笑みを張り付けたリーゼロッテとは対照的に、ジークヴァルトが眉間に大きくしわを寄せた。当たり障りのないように受け答えしているというのに、これではすべてが台無しだ。
「それはそうと、母が夫人を茶会に招待したいと申しておりましてな」
「ティール公爵様のご母堂様が?」
「よければお受けしていただけますかな?」
「もちろんですわ。構いませんわよね? ジークヴァルト様」
「……ああ」
低い声で答えたジークヴァルトは、どう見ても不承不承の様子だ。
「ふむ。それならばフーゲンベルク公爵にも招待状を送るよう、母には伝えておきましょう」
「お、お気遣い痛み入ります」
今日はジークヴァルトのせいで、頭を下げてばかりいるような気がする。こんなことで、今までどうやってジークヴァルトは社交を乗り切ってきたのだろうか。そう不思議に思えてくる。
しかしなんてことはない。ジークヴァルトがポンコツになるのは、リーゼロッテが絡んだ時というだけの話だ。
ふとどこからか視線を感じて、リーゼロッテは何とはなしに遠くを見やった。ダンスフロアを越えた向こう、壇上の玉座で悠然と頬杖をつくハインリヒが目に入る。
小さく笑んでくれたような気がして、リーゼロッテは王に向けて美しい礼を取った。そこをすかさずジークヴァルトに腰をさらわれて、不格好な態勢でその胸へと倒れ込む。
「もう、ヴァルト様!」