嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「イザベラ様、ここに連れてきてくださってありがとうございました。わたくし、本当に疲れてしまって」
「わたくしも座る口実ができたから丁度よかったわ。それにルチア様には目をかけるよう、お父様に言われてるもの。仕方ないけれど、これからも面倒を見て差し上げてよ? ありがたくお思いになって」
「はい……ブラル伯爵様のお心遣いに感謝します。も、もちろんイザベラ様にも」
片眉を吊り上げたイザベラを前にルチアは慌てて付け足した。
「そのお気持ち、これからもお忘れにならないでね」
つんと顔を逸らしたイザベラの縦ロールが、ビヨンビヨンと跳ね踊る。それ以降は会話もないまま、ルチアは手持ち無沙汰にちびちびと果実水を口に含んだ。
「あ……っ!」
ぼんやりと眺めていた貴族の群れの中に、カイの後ろ姿を見つけた。残り少なくなったグラスをこぼす勢いで、ルチアはとっさに立ち上がった。
大声を出せば届きそうな距離に、声を張り上げそうになる。しかし自分のいる場所を思い出し、延ばした手を行き場なく彷徨わせた。
ふいにカイが僅かに振り向いた。琥珀の瞳と一瞬視線が絡む。気づいたときにはもう、ルチアはそこから駆け出していた。
かさばるスカートに苛立ちながら、着飾った紳士淑女の間を抜けていく。訝しげに囁きあう周囲に気づけないまま、無我夢中でカイを目指した。
「カイ!」
小さくない声で呼ぶも、カイはさらに先へと進んでしまっている。誰か紳士とぶつかり、よろけた二の腕を掴まれた。
そのときカイがもう一度こちらを振り返った。確実に目が合ったのに、冷たく視線を逸らされる。
連れ立っていた夫人の細い腰を、カイは自身の体に引き寄せた。近すぎる距離で耳打ちし合い、親密そうにふたりは奥へと向かう。その先には休憩室が立ち並ぶ廊下に出る扉があった。
「カイ……」
「ちょっと! 急に飛び出したりして一体何をなさっているの!?」
「……イザベラ様」
「わたくしも座る口実ができたから丁度よかったわ。それにルチア様には目をかけるよう、お父様に言われてるもの。仕方ないけれど、これからも面倒を見て差し上げてよ? ありがたくお思いになって」
「はい……ブラル伯爵様のお心遣いに感謝します。も、もちろんイザベラ様にも」
片眉を吊り上げたイザベラを前にルチアは慌てて付け足した。
「そのお気持ち、これからもお忘れにならないでね」
つんと顔を逸らしたイザベラの縦ロールが、ビヨンビヨンと跳ね踊る。それ以降は会話もないまま、ルチアは手持ち無沙汰にちびちびと果実水を口に含んだ。
「あ……っ!」
ぼんやりと眺めていた貴族の群れの中に、カイの後ろ姿を見つけた。残り少なくなったグラスをこぼす勢いで、ルチアはとっさに立ち上がった。
大声を出せば届きそうな距離に、声を張り上げそうになる。しかし自分のいる場所を思い出し、延ばした手を行き場なく彷徨わせた。
ふいにカイが僅かに振り向いた。琥珀の瞳と一瞬視線が絡む。気づいたときにはもう、ルチアはそこから駆け出していた。
かさばるスカートに苛立ちながら、着飾った紳士淑女の間を抜けていく。訝しげに囁きあう周囲に気づけないまま、無我夢中でカイを目指した。
「カイ!」
小さくない声で呼ぶも、カイはさらに先へと進んでしまっている。誰か紳士とぶつかり、よろけた二の腕を掴まれた。
そのときカイがもう一度こちらを振り返った。確実に目が合ったのに、冷たく視線を逸らされる。
連れ立っていた夫人の細い腰を、カイは自身の体に引き寄せた。近すぎる距離で耳打ちし合い、親密そうにふたりは奥へと向かう。その先には休憩室が立ち並ぶ廊下に出る扉があった。
「カイ……」
「ちょっと! 急に飛び出したりして一体何をなさっているの!?」
「……イザベラ様」