嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
◇
その夜、書庫から持ち出した最新の貴族名鑑を、リーゼロッテは夜遅くまで眺めていた。おさらいしながらページをめくる。
名前と顔を一致させるのも一苦労だが、各家の思惑、派閥関係の複雑さに頭が痛くなってくる。世間話と旬の話題に加えて、出すべき話題、避けて通るべき話題、探るべき情報なども流動的に変化する。それをうまく織り交ぜて、表面上は穏やかに駆け引きを行っていくのだ。
そんな器用なことが自分にできるとは思えない。今までこなしてきた社交が、いかに生ぬるいものだったかを思い知る。
(うまく切り抜けられないんだったら、エマ様の言う秘策に頼るしかないかしら……)
それでも正しい知識があるのとないのとでは、結果も変わってくるだろう。そう思って再び貴族名鑑に目を落とした。
(とにかくやれるだけのことはやらなくちゃ!)
いつかこの努力が実を結ぶことを信じて、リーゼロッテはページを何時間もめくり続けた。
ゆらゆら揺れて、やわらかい場所に降ろされる。スプリングがぎしりと鳴って、温かい腕に包まれた。
「ヴァルト様……?」
うすく瞼を開くと、青の瞳が目に映る。うれしくて、リーゼロッテはふわりと笑った。そこをすかさず口づけられる。
居間で勉強をしているうちに、そのまま眠ってしまったのだろう。やっと戻ってきたジークヴァルトに手間をかけさせてしまった。そう思っても、しあわせばかりがこみ上げる。
再びまどろみに沈みそうになったところを、角度を変えて何度も啄まれた。
「んん……ふぁ、んっ」
ぼんやりと開いた唇から、青の波動が流れ込んできた。お返しのように流し返すと、緑の力がするするとジークヴァルトに吸い込まれていく。それが心地よくて、リーゼロッテはジークヴァルトの顔に手をかけた。耳の守り石に触れ、指先が熱くなる。
「リーゼロッテ……」
「っん、ぁ、ヴァルトさま……」
夢うつつに呼びかけた。半ば寝ぼけた状態のまま、眠りのはざまで体に火を灯される。
「……あ……るとさ、ま……ぁ」
ねだるような声が口から漏れた。
触れる指先に翻弄されて、夢と現実の境界が曖昧なまま、リーゼロッテはジークヴァルトとあまい夜を過ごしたのだった。
その夜、書庫から持ち出した最新の貴族名鑑を、リーゼロッテは夜遅くまで眺めていた。おさらいしながらページをめくる。
名前と顔を一致させるのも一苦労だが、各家の思惑、派閥関係の複雑さに頭が痛くなってくる。世間話と旬の話題に加えて、出すべき話題、避けて通るべき話題、探るべき情報なども流動的に変化する。それをうまく織り交ぜて、表面上は穏やかに駆け引きを行っていくのだ。
そんな器用なことが自分にできるとは思えない。今までこなしてきた社交が、いかに生ぬるいものだったかを思い知る。
(うまく切り抜けられないんだったら、エマ様の言う秘策に頼るしかないかしら……)
それでも正しい知識があるのとないのとでは、結果も変わってくるだろう。そう思って再び貴族名鑑に目を落とした。
(とにかくやれるだけのことはやらなくちゃ!)
いつかこの努力が実を結ぶことを信じて、リーゼロッテはページを何時間もめくり続けた。
ゆらゆら揺れて、やわらかい場所に降ろされる。スプリングがぎしりと鳴って、温かい腕に包まれた。
「ヴァルト様……?」
うすく瞼を開くと、青の瞳が目に映る。うれしくて、リーゼロッテはふわりと笑った。そこをすかさず口づけられる。
居間で勉強をしているうちに、そのまま眠ってしまったのだろう。やっと戻ってきたジークヴァルトに手間をかけさせてしまった。そう思っても、しあわせばかりがこみ上げる。
再びまどろみに沈みそうになったところを、角度を変えて何度も啄まれた。
「んん……ふぁ、んっ」
ぼんやりと開いた唇から、青の波動が流れ込んできた。お返しのように流し返すと、緑の力がするするとジークヴァルトに吸い込まれていく。それが心地よくて、リーゼロッテはジークヴァルトの顔に手をかけた。耳の守り石に触れ、指先が熱くなる。
「リーゼロッテ……」
「っん、ぁ、ヴァルトさま……」
夢うつつに呼びかけた。半ば寝ぼけた状態のまま、眠りのはざまで体に火を灯される。
「……あ……るとさ、ま……ぁ」
ねだるような声が口から漏れた。
触れる指先に翻弄されて、夢と現実の境界が曖昧なまま、リーゼロッテはジークヴァルトとあまい夜を過ごしたのだった。