嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
 ご機嫌で守り石に力を()めるリーゼロッテと対照的に、ジークヴァルトは難しい顔で執務に取り組んでいる。そんなふたりを交互に眺めながら、あぐらの姿勢でジークハルトはそこら辺をのんびりと浮いていた。
 数日後の茶会のせいで、しばらくの間はリーゼロッテに手を出すことは許されない。いわゆる「まぐあい禁止令」を前に、ジークヴァルトの不満たらたらな思いがひしひしと伝わってくる。

(抱きつぶすまでヤリまくるから制限をかけられるのに)

 もっと手加減を覚えれば、禁止されるのはせいぜい出かける前日くらいで済むだろう。

(ま、ヴァルトは我慢しすぎだったしね。(たが)が外れて制御不能になってるから、もうどうしようもないか)

 ジークヴァルトの感情は常にこちらに筒抜けだ。悶々とされると正直鬱陶(うっとう)しいが、最近ではリーゼロッテとの睦言のご褒美が待っている。こっそりとそれをたのしみにしているジークハルトだった。

『そんなことが知れたら無表情で逆上して、手が付けられなくなるんだろうなぁ』

 眉間にしわを寄せているジークヴァルトを見やり、ジークハルトはくすりと笑みをこぼした。

「何のお話ですか?」

 不思議そうに小首をかしげたリーゼロッテは、以前と変わらない無垢な瞳を向けてくる。ジークハルトはリーゼロッテのあられもない姿を、毎晩のように見続けている。なにしろジークヴァルトの思念が強すぎて、寝室を覗かなくとも否応なしに伝わってきてしまうのだ。

『そんなことが知れたら涙目で真っ赤になって、顔も合わせてくれなくなるんだろうなぁ』
「ハルト様……?」
『ううん、何でもないよ。ただのひとりごと』

 大きな緑の瞳と見つめ合い、ジークハルトは満面の笑顔を返した。

『それよりもリーゼロッテ、益々上達したんじゃない?』
「そうなのです! わたくしもう、二度と失敗する気がいたしませんわ」

 自慢げに掲げられた守り石は、鮮やかな緑が幻想的に揺らめいている。(きら)めきがたゆとう様をうっとり眺めて、リーゼロッテは満足げなため息をこぼした。

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