嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「ハルトの言うことなど真に受けるな」
「ですが、ヴァルト様……」

 会話に割り込んだジークヴァルトが、髪を梳きながら力の乱流を整えた。リーゼロッテの中で青と緑が交じり合っていく。
 夜ごとひとつに繋がるふたりの力は、別物でありながらこの上なく美しい調和を保っていた。最近ではそんなふうにジークハルトの目に映る。

『そうだよ、ヴァルト。なんでそんな傷つくこと言うのさ』
「うるさい、お前は黙っていろ」

 お決まりのあーんの往復が始まって、ふたりから少しばかり距離を取った。この時間を邪魔すると、ジークヴァルトの機嫌がものすごく悪くなるからだ。

(ちょっとくらいおしゃべりに混ぜてくれたっていいのに)

 これまで守護してきた者の中でも、ジークヴァルトの独占欲の強さは断トツだ。やれやれと思いつつ、生温かくふたりのやり取りを見守った。

(ヴァルトと話ができるのも、あとどれくらいかな……)

 今こうして会話が成立しているのは、ジークヴァルトの並外れた力があるからだ。この先リーゼロッテが託宣の子を宿したら、ジークヴァルトとの繋がりはその瞬間から(ほど)かれる。次代の龍の(たて)守護者(ジークハルト)を認識できるかは、神のみぞ知ると言ったところだ。
 八百有余年に渡ってそうしてきたように、視えぬ存在として見守る日々に戻るだけのこと。そうは思うが、一度得たものを手放したくないと思うのが人情だ。

(このオレにまだひとの心が残っていたなんて、な)

 それを思い出させてくれたのは、リーゼロッテに他ならない。

 歴代最強の龍の盾の(つがい)に、星読みの末裔(まつえい)が選ばれた。それは青龍の思惑があってこそだ。初めは龍の血筋が薄れてきた証拠くらいに感じていたが、続く不可解な事象はすべて龍の計画通りに進行し続けている。

(双子の王子に降りた託宣も、過去に例を見ない不可解なものだったし……)

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