嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「最近のドレスの流行りはシンプル過ぎて、あたくし物足りなくって。今度いらしたときは、みなさんもっともっと素敵に着飾ってきてほしいわ! 特にリーゼロッテ様! 次はあたくしの見立てたドレスでいらしてちょうだいね!」
「ぜひともそうさせていただきますわ」
愛想笑いを返しつつ、どんなド派手なドレスを着させられるのかと心配になってくる。それに自分以外の人間から贈られたものとなると、ジークヴァルトがいい顔をしなさそうだ。
そんなことを考えていると、隣にいた夫人が苛立ったようにため息をついた。この場に居合わせた彼女はグレーデン侯爵夫人、エーミールの母親カミラだ。
普段の彼女はいつも落ち着いた装いで、“大人の女性”といった雰囲気を醸し出している。しかし今は若い令嬢が着るようなフリフリの桃色ドレス姿で、一瞬誰だか分からなかったくらいだった。
「ほんと嫌気がさすわ」
「カミラ様、どこかお加減でも……?」
気づかわしげに小声で問うと、カミラは扇を広げてリーゼロッテに耳打ちしてくる。
「パウラお義母様のことですわ。リーゼロッテ様も覚悟なさって。いくつになってもこんな格好をさせられるのだから」
カミラは賭け事のチップにされて、レルナー家からティール家へ養子に入った。そこで義理の母親となったパウラに着せ替え人形よろしく、桃色尽くしの令嬢時代を過ごしたらしい。
時たまお付き合いするくらいなら余裕の笑みも浮かべられるが、このテンションが毎日続くのだとすると、さすがのリーゼロッテでも気疲れしてしまいそうだ。
「それは……カミラ様もいろいろとご苦労を……」
「分かってくださる? まったく……ウルリーケお義母様のようにさっさと逝ってくれないかしら」
絶句して、淑女の笑みで固まった。否定も肯定もできぬまま、考えても次に言うべき言葉が見つからない。
「いやだ。あの子、また来ているわ」
「え……?」
紳士サイドの一角で、なにやら小さなもめ事が起きている様子だ。それをティール家の使用人が間に入ってなんとか収めようとしている。
「わたくしの義理の甥ですわ。ティール家を勘当されたのに、ああやって定期的にお金をせびりに来るんですのよ。恥知らずにもほどがあるわ」
「勘当を……?」
「愚かなことに身分の低い女と駆け落ちをしたんですの。勘当されて当然でしょう?」
「ぜひともそうさせていただきますわ」
愛想笑いを返しつつ、どんなド派手なドレスを着させられるのかと心配になってくる。それに自分以外の人間から贈られたものとなると、ジークヴァルトがいい顔をしなさそうだ。
そんなことを考えていると、隣にいた夫人が苛立ったようにため息をついた。この場に居合わせた彼女はグレーデン侯爵夫人、エーミールの母親カミラだ。
普段の彼女はいつも落ち着いた装いで、“大人の女性”といった雰囲気を醸し出している。しかし今は若い令嬢が着るようなフリフリの桃色ドレス姿で、一瞬誰だか分からなかったくらいだった。
「ほんと嫌気がさすわ」
「カミラ様、どこかお加減でも……?」
気づかわしげに小声で問うと、カミラは扇を広げてリーゼロッテに耳打ちしてくる。
「パウラお義母様のことですわ。リーゼロッテ様も覚悟なさって。いくつになってもこんな格好をさせられるのだから」
カミラは賭け事のチップにされて、レルナー家からティール家へ養子に入った。そこで義理の母親となったパウラに着せ替え人形よろしく、桃色尽くしの令嬢時代を過ごしたらしい。
時たまお付き合いするくらいなら余裕の笑みも浮かべられるが、このテンションが毎日続くのだとすると、さすがのリーゼロッテでも気疲れしてしまいそうだ。
「それは……カミラ様もいろいろとご苦労を……」
「分かってくださる? まったく……ウルリーケお義母様のようにさっさと逝ってくれないかしら」
絶句して、淑女の笑みで固まった。否定も肯定もできぬまま、考えても次に言うべき言葉が見つからない。
「いやだ。あの子、また来ているわ」
「え……?」
紳士サイドの一角で、なにやら小さなもめ事が起きている様子だ。それをティール家の使用人が間に入ってなんとか収めようとしている。
「わたくしの義理の甥ですわ。ティール家を勘当されたのに、ああやって定期的にお金をせびりに来るんですのよ。恥知らずにもほどがあるわ」
「勘当を……?」
「愚かなことに身分の低い女と駆け落ちをしたんですの。勘当されて当然でしょう?」