嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
まだ元気だったころの日常だろうか。紳士が器用に木材から家具を造り上げていく。彼女が称賛の声を上げると、得意げな顔で紳士がさらに木槌をふるう。笑い声が溢れる風景が、眩い光に包まれていく。
彼女の意を酌んで、必死に考えを巡らせる。これ以上負債を抱えないで済む、そんな方法をどうにか探した。
「……その代わり、お仕事なら紹介して差し上げられます。フーゲンベルク家では腕のいい家具職人を探しておりますの。もちろんあなたのご希望があればですが」
駆け落ちしたとはいえ、貞子紳士は公爵家の人間だ。働いて稼ぐという選択が取れなかったからこそ、借金するという手段を選んだのかもしれない。あとは彼次第だと、リーゼロッテは紳士に判断をゆだねた。
「ご提案、ありがとうございます。前向きに考えてみます」
「ええ、いつでも遠慮なくお声がけくださいませ」
そのやり取りに彼女がほっとした顔をした。彼女のために踊っていることを思い出して、リーゼロッテは集中し、心を込めてひとつひとつ丁寧にステップを踏んだ。
それが伝わったのか、吹っ切れたように紳士はリードしてくる。彼女も笑顔になって、くるくると三人で踊り続けた。
うれしい、たのしい、しあわせだ。寝台の上でずっとずっと夢見ていた。こうしてまた彼と踊ることを。
彼女のよろこびの思念が伝わってくる。それを胸いっぱいに吸い込んで、リーゼロッテの感情も次第に昂ってくる。
最後にほんの一瞬だけでも、ふたり手を取り合って踊らせてあげたい。膨らんだ思いのまま、彼女に向けてリーゼロッテは何の隔たりなく心を開いた。
一瞬だけ戸惑って、彼女はうれしそうに体を重ねてきた。内側の深い場所へと招き入れる。リーゼロッテが彼女になって、彼女がリーゼロッテになった。それはちょっと不思議な感覚で、意識しないでも体が勝手に動きだす。
確かめるように、彼女が紳士の手をぎゅっと握りしめた。誰よりも愛するひとの温もりだ。愛してる愛してる愛してる。わたしがいなくなっても、どうかしあわせに生きて。
こみ上げる思いが最高潮に達したとき、光に包まれ何もかもが見えなくなった。
――ありがとう
彼女の意を酌んで、必死に考えを巡らせる。これ以上負債を抱えないで済む、そんな方法をどうにか探した。
「……その代わり、お仕事なら紹介して差し上げられます。フーゲンベルク家では腕のいい家具職人を探しておりますの。もちろんあなたのご希望があればですが」
駆け落ちしたとはいえ、貞子紳士は公爵家の人間だ。働いて稼ぐという選択が取れなかったからこそ、借金するという手段を選んだのかもしれない。あとは彼次第だと、リーゼロッテは紳士に判断をゆだねた。
「ご提案、ありがとうございます。前向きに考えてみます」
「ええ、いつでも遠慮なくお声がけくださいませ」
そのやり取りに彼女がほっとした顔をした。彼女のために踊っていることを思い出して、リーゼロッテは集中し、心を込めてひとつひとつ丁寧にステップを踏んだ。
それが伝わったのか、吹っ切れたように紳士はリードしてくる。彼女も笑顔になって、くるくると三人で踊り続けた。
うれしい、たのしい、しあわせだ。寝台の上でずっとずっと夢見ていた。こうしてまた彼と踊ることを。
彼女のよろこびの思念が伝わってくる。それを胸いっぱいに吸い込んで、リーゼロッテの感情も次第に昂ってくる。
最後にほんの一瞬だけでも、ふたり手を取り合って踊らせてあげたい。膨らんだ思いのまま、彼女に向けてリーゼロッテは何の隔たりなく心を開いた。
一瞬だけ戸惑って、彼女はうれしそうに体を重ねてきた。内側の深い場所へと招き入れる。リーゼロッテが彼女になって、彼女がリーゼロッテになった。それはちょっと不思議な感覚で、意識しないでも体が勝手に動きだす。
確かめるように、彼女が紳士の手をぎゅっと握りしめた。誰よりも愛するひとの温もりだ。愛してる愛してる愛してる。わたしがいなくなっても、どうかしあわせに生きて。
こみ上げる思いが最高潮に達したとき、光に包まれ何もかもが見えなくなった。
――ありがとう