嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「そう言えば侍女長って、確かロミルダって人じゃなかったでしたっけ? エラ様がなったんですか?」
「リーゼロッテ様がフーゲンベルク家に嫁がれたのを機に、侍女長はわたしが引き継ぎました。それにルチア様、わたしは貴族籍を抜け平民となった身です。今後はどうぞエラと呼び捨てになさってください」
「えっ、貴族ってやめられるんですか!?」
「父が王に爵位を返上したのです。一代限りの男爵位でしたし、もともと父が他界すれば平民に戻る運命でした。わたしの場合、平民に戻る時期が早まっただけと言えます。子爵家のご令嬢であるルチア様は、貴族から平民になるのは難しいでしょう」
「そう、ですか……」
先回りするようにエラにくぎを刺され、ルチアは残念そうに俯いた。察するに、ルチアが王族の血を引くことを、エラも承知していそうだ。いずれルチア自身も誰からか知らされるだろうに、なぜかカイはそれを告げる気はないようにベッティには思えた。
「のちほど奥様の元へお連れいたします。それまではごゆっくりなさってください。ベッティも何かあったら遠慮せずに言ってくださいね」
「あのぅ……」
ためらいがちに声をかけると、出ていこうとしていたエラが笑顔で振り返った。この様子なら、髪を切った犯人がベッティであることを、リーゼロッテはエラに告げ口してはいないのだろう。
もし真実を知っていたら、リーゼロッテ命のエラが黙っているはずはない。侍女長となった彼女までもが敵に回ってしまったら、公爵から逃げ切ることは如何にベッティでも難しくなる。
胸の内でリーゼロッテに感謝しながら、エラに包みを差し出した。
「ちょっと遅れちゃいましたがぁ、ご結婚のお祝いですぅ」
「まぁ、ありがとう、うれしいわ」
中にはエラに似合いそうな髪留めが入っている。仕事中でも使えるようにと華やか過ぎない実用的なものを選んだ。結構いい値段がしたが、賭けで得た儲けを考えるとむしろ安すぎる買い物だ。
「でもこれからはあまり気を遣わなくて大丈夫だから」
すまなそうにエラは受け取った。他家に世話になる場合、待遇を良くしてもらうために、使用人に対して賄賂を贈るのが当たり前になっている貴族社会だ。
「わたしはマテアスさんとのご結婚をぉ、心より祝福したいだけですのでぇ。超・絶っ! おめでとうございますぅっ!」
「そ、そう? それはありがとう」
戸惑い気味のエラの両手を取って、嘘偽りない祝辞を贈る。エラ争奪杯でひと財産築けたのは、マテアスが頑張ったと言うよりも、数いる候補の中からエラがマテアスを選んでくれたからだ。もう足を向けて眠るなど一生できない。エラ様様なベッティだった。
「さぁてぇ、ルチア様、今お紅茶淹れますねぇ」
「リーゼロッテ様がフーゲンベルク家に嫁がれたのを機に、侍女長はわたしが引き継ぎました。それにルチア様、わたしは貴族籍を抜け平民となった身です。今後はどうぞエラと呼び捨てになさってください」
「えっ、貴族ってやめられるんですか!?」
「父が王に爵位を返上したのです。一代限りの男爵位でしたし、もともと父が他界すれば平民に戻る運命でした。わたしの場合、平民に戻る時期が早まっただけと言えます。子爵家のご令嬢であるルチア様は、貴族から平民になるのは難しいでしょう」
「そう、ですか……」
先回りするようにエラにくぎを刺され、ルチアは残念そうに俯いた。察するに、ルチアが王族の血を引くことを、エラも承知していそうだ。いずれルチア自身も誰からか知らされるだろうに、なぜかカイはそれを告げる気はないようにベッティには思えた。
「のちほど奥様の元へお連れいたします。それまではごゆっくりなさってください。ベッティも何かあったら遠慮せずに言ってくださいね」
「あのぅ……」
ためらいがちに声をかけると、出ていこうとしていたエラが笑顔で振り返った。この様子なら、髪を切った犯人がベッティであることを、リーゼロッテはエラに告げ口してはいないのだろう。
もし真実を知っていたら、リーゼロッテ命のエラが黙っているはずはない。侍女長となった彼女までもが敵に回ってしまったら、公爵から逃げ切ることは如何にベッティでも難しくなる。
胸の内でリーゼロッテに感謝しながら、エラに包みを差し出した。
「ちょっと遅れちゃいましたがぁ、ご結婚のお祝いですぅ」
「まぁ、ありがとう、うれしいわ」
中にはエラに似合いそうな髪留めが入っている。仕事中でも使えるようにと華やか過ぎない実用的なものを選んだ。結構いい値段がしたが、賭けで得た儲けを考えるとむしろ安すぎる買い物だ。
「でもこれからはあまり気を遣わなくて大丈夫だから」
すまなそうにエラは受け取った。他家に世話になる場合、待遇を良くしてもらうために、使用人に対して賄賂を贈るのが当たり前になっている貴族社会だ。
「わたしはマテアスさんとのご結婚をぉ、心より祝福したいだけですのでぇ。超・絶っ! おめでとうございますぅっ!」
「そ、そう? それはありがとう」
戸惑い気味のエラの両手を取って、嘘偽りない祝辞を贈る。エラ争奪杯でひと財産築けたのは、マテアスが頑張ったと言うよりも、数いる候補の中からエラがマテアスを選んでくれたからだ。もう足を向けて眠るなど一生できない。エラ様様なベッティだった。
「さぁてぇ、ルチア様、今お紅茶淹れますねぇ」