嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
 カークを引き連れ廊下を戻る。ベッティが来ているとエラに聞き、後先も考えず部屋を飛び出してしまった。

(ルチア様もちょっとびっくりなさってたわね)

 公爵夫人にあるまじき落ち着きのなさだったと、今更ながらに反省しきりだ。しかしどうしてもベッティに直接謝りたかった。元気そうな顔を見て、ようやく安心できたリーゼロッテだ。

(だけどヴァルト様に何か言われちゃうかしら……)

 屋敷内の移動は特に制限はされていないが、誰にも何も言わずに出てきたのは少しばかりまずかったかもしれない。
 貞子の件があったので、しばらくはきちんとおとなしくしていよう。そう心に誓った矢先のことだ。我ながら学習能力が皆無(かいむ)だと、リーゼロッテは小さくため息をこぼした。

「ねぇ、カーク。ジークヴァルト様、怒ってそう?」

 振り向くとカークは確かめるように首を傾けた。次いで右に左に、延々と頭を動かし続ける。どうやら送信オンリーで、カークに受信機能はないようだ。

「わ、分からないなら大丈夫よ。無理を言ってごめんなさい」
「そこのいぎょう! よわいものイジメをしゅるなんて、ゆるちぇないぞ。やっつけてやるっ」

 可愛らしい声が響き、カークとの間にぽっちゃりした男の子が割って入った。いきなりのことに言葉を失う。身なりからして貴族の子息のようだ。

「おんな、あんしんしゅるといい。おまえはこのおれたまがマモってやるからな」
「まぁ」

 小さな剣を掲げ、リーゼロッテを後ろ手に(かば)う。勇敢な騎士のお出ましに、困り顔のカークがわたわたと手を動かした。

「あの、勇者様、その異形はわたくしの護衛です。決して悪さはしませんので、どうかお見逃しくださいませんか?」
「なんと、しょうであったか。いぎょうのくちぇにココロをいれかえるとは、なかなかアッパレなやつ。ほめてやろう」

 居丈高(いたけだか)にぽよんとお腹を()り返らせる。褒められて、カークは照れたように頭をかいた。

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