嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 そこまで思ってはたと気づく。ブルーメ子爵は社交に(うと)そうな印象だ。養子先としては人選ミスとしか言いようがなかった。ハインリヒ王は社交界の恐ろしさなど、(しん)には理解していないのかもしれない。

 リーゼロッテに預けているくらいだ。ジークヴァルトにしても、そこまでの危機感は持っていないのだろう。この際、王家の威信などはどうでもいいが、公爵家に災いが降りかかるのだけは絶対に避けて通りたい。

(もう! どうしてわたしがこんな役目をしなきゃならないのよ)

 自分には荷が重すぎる。マテアスを恨みつつ、今はルチアの事情を正確に把握することが必要だ。

「じゃあ、他にこの話を知っている人間はいて?」
「イグナーツ様と……カイ・デルプフェルト様です」
「デルプフェルト様が?」
「はい、イグナーツ様にわたしのこと頼まれているって言ってました」

(イグナーツ・ラウエンシュタインに?)

 なぜここでリーゼロッテの父親が出てくるのか、益々事情が掴めない。

(王はラウエンシュタイン家にルチア様を任せたということ?)

 ブルーメ家は確かイグナーツの実家だったはずだ。やはり自分の手に余り過ぎる事態のようで、エマニュエルはそれ以上考えることを放棄した。話だけをしっかり聞いて、最終的な判断はジークヴァルトとマテアスに(ゆだ)ねるしかないだろう。

「だいたいのところは理解しました。その上で忠告させてもらうわ。この話は二度としないこと。どこで誰に聞かれたとしてもよ」
「あ……わたし、カイにもそう言われてて……」

 だったらなぜ自分に話したりしたのだ。ため息をこらえつつも、追い詰めるのは得策でないとエマニュエルは微笑んだ。

「そうね、これ以上他人に知られるのは良くないわね。でないとブルーメ子爵にも迷惑をかけることになるわ。貴族にも悪い人間はいっぱいいるの。あなたも社交界で、ずっと快適に過ごしていきたいでしょう?」
「でもわたしが貴族だなんてやっぱりおかしいです!」
「あなたは白の夜会で王前に立ったでしょう? 王が認めたということは、ルチア様、あなたはもう立派な貴族なのよ」
「そんな……」

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