嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
「……ということがありました。今のところ、ルチア様はそれで納得してくれたようですわ」

 姉の報告にマテアスは困り眉をさらにハの字に下げた。

(エマニュエル様に任せてビンゴでしたねぇ)

 王家の監視の手前、ルチア・ブルーメに関してはあまり表立って調査ができずにいた。しかし小さな胸騒ぎが付きまとって、念のためにとエマニュエルを招集するに至った。我ながら勘が冴えると、マテアスは自画自賛でひとり頷いた。

「旦那様、いかがいたしましょう?」
「王命だ。滞在中、事なきを得ればそれでいい」
「では彼女の監視を(おこた)らないよう努めます。しばらくは引き続きエマニュエル様にお任せしようと思いますが構いませんか?」
「ああ、エマには負担をかけるがよろしく頼む」
「仰せのままに」

 内心では面倒事をと思っているエマニュエルも、ジークヴァルトに言われては素直に引き受けるしかない。使える者は身内だろうと、容赦なく利用するマテアスだった。

「リーゼロッテ様にはお伝えしますか?」
「いや、いい。そのかわりブルーメ嬢とふたりきりにはするな」
「承知いたしました」
「旦那様、もうひとつお話したいことがあるのですが、よろしいでしょうか……?」
「なんだ?」

 めずらしくエマニュエルは遠慮がちだ。

「気のせいだったら構わないのですが、リーゼロッテ様と何かございましたか? 先ほどお会いしたときにお元気がないと言うか、いつもとご様子が違うように感じられましたので……」

 途端にジークヴァルトの眉根がぎゅっと寄せられた。これは図星を刺されたときによくする癖だ。

(最近はうまくやっていると思っていたのに……)

 胡乱(うろん)な目を(あるじ)に向ける。ふたりが婚姻を果たした今、マテアスの心配事は解消された。エラもいることだしと、執務にのみ専念していたのはまずかったろうか。

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